週刊エコノミスト Online書評

中国 知ることのできぬ十数億の生き方=辻康吾

 林立する摩天楼。巨万の富を築いたミリオネア。と同時に、学校に行けない子供たち。医者にもかかれぬ極貧層。中国に対しては、報道や関心はどうしても両極端に向かう。それらはみな事実ではあろうが、その他の十数億を超える人々はどうしているのか。その一端を一部の文学作品で垣間見ることができる。

 日本のテレビドラマ「東京女子図鑑」に触発され中国でも「上海女子図鑑」「北京女子図鑑」など「図鑑もの」がテレビやネットでドラマ、出版物として流行している。張佳の小説『北京女子図鑑』(2019年 北京聯合出版社)もその一つ。さまざまな仕事をこなし、男探しもするなど北京で生きる女性たちの身辺を描き、その時々での感想や決意など、そのほぼすべてが誰にでもありうる物語として展開されている。

 婚約者と別れバーで泥酔し「それでも彼が好きなの」と号泣する。マネジャーにこっぴどく叱られ裏階段ですすり泣く。マンションを買って両親を迎えようとしたが、「嫁に行け」と怒鳴られ横丁で泣く。浮気をした夫との離婚が成立したのに寝室で泣く。病院のベッドで子供に付き添いながら、なぜか涙が止まらない女性。この小説に登場する彼女たちは、最後に、激情と涙をおさめ、「自分には自分の過去と夢があり、北京に来て失敗を繰…

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