週刊エコノミスト Onlineワイドインタビュー問答有用

時空超えた星空案内人=大平貴之 プラネタリウム・クリエーター/771

    写真1 「プラネタリウムは、宇宙の星々の空間的広がりや成り立ちなど、その特徴を分かりやすく理解してもらうための道具の一つ」 撮影=武市
    写真1 「プラネタリウムは、宇宙の星々の空間的広がりや成り立ちなど、その特徴を分かりやすく理解してもらうための道具の一つ」 撮影=武市

     あらゆる場所を星空に──。大平貴之さんは今、科学館の専用施設にとどまらず、野球ドームや挙式会場などさまざまな場所をプラネタリウムに変え、人々を魅了している。

    (聞き手=冨安京子・ジャーナリスト)

    大平 2018年12月に完成した、直径500メートル級の巨大ドームに投影可能なプラネタリウム投影機「GIGANIUM」(ギガニウム)を使いました。昨年11月にメットライフドームで実証実験をしたので、完成後のお披露目もぜひここでやりたいと考えていました。メットライフドームの天井の直径は約145メートル。多くのお客さんに満天の星を楽しんでもらえたと思います。

    大平 より大きなドームの天井に投影するには、従来の投影機では光源としての輝度や、像をしっかり結ぶための光学系(レンズや反射鏡など装置の総称)に課題がありました。そこで、超高輝度の光源を新開発し、ミラー光学系でも特許を取得して、これまでの1000倍もの投影出力を実現しました。ギガニウムは数万人の人が同時に楽しめるため、大規模なコンサートの背景演出などでも使えますよ。

    大平 初代メガスターは投影機に搭載した32枚の恒星原板レンズに計150万個、完成形では170万個の星に見立てた穴を開けて映し出しました。星の大きさは80マイクロメートル(0・08ミリ)から、小さいものは0・7マイクロメートル(0・0007ミリ)まで。肉眼での作業では困難で、主に独自開発した原板製造装置「マイクロプロッター」での製作です。

    大平 従来は、それ以上の恒星の再現は必要ないという考え方が主流でした。メガスターは、その考え方に一石を投じることになりました。海外の研究機関が公開している星のデータベースを基に、IC(集積回路)などの半導体製造技術にヒントを得て、肉眼では見ることができない11等星まで再現する原板を完成させたことで、それまでよりはるかにリアルな星空を再現できるようになったんです。

    大平 03年に開発したメガスターⅡは改良を重ねて1000万個、12年開発のメガスターⅢでは最大2000万個の星を投影します。また、(ソニーグループの光ディスクメーカー)ソニーDADCジャパン(現ソニー・ミュージックソリューションズ)と共同開発した超精密原板「GIGAMASK」(ギガマスク)が完成したので近い将来、これを搭載するプラネタリウムでは20等星までの10億個以上の星を再現できるようになります。

     今、振り返れば、個人だったからできた仕事だなぁと、しみじみ思います。企業にいると予算や組織ならではのいろんな制約がありますが、それにとらわれず自分が納得いくまで取り組めますから。

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