週刊エコノミスト Onlineワイドインタビュー問答有用

欧州で代表を支える=藤田俊哉・日本サッカー協会強化部会員/772

    「日本代表が世界のトップに立つためのサポートを第一に、自分のできることを全力でやるだけ」 撮影=佐々木 龍
    「日本代表が世界のトップに立つためのサポートを第一に、自分のできることを全力でやるだけ」 撮影=佐々木 龍

     欧州で築いた幅広いネットワークと行動力を買われ、欧州に駐在してサッカー日本代表を支える藤田俊哉さん。元日本代表としても活躍した名プレーヤーに、挑戦と葛藤の歩みを聞いた。

    (聞き手=元川悦子・ライター)

    藤田 日本代表の海外組は増加の一途をたどっています。11月14日の2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア2次予選キルギス戦でも、招集メンバー23人のうち16人が欧州クラブの所属でした。その他の選手を含め、欧州の主要リーグには現在、約40人の日本人選手がいます。日本人選手が所属するクラブを訪問したり、出場する試合を見たりすることにほとんどの時間を費やしています。

    藤田 ある週末は、自宅のあるオランダ・フェンロからイングランドに飛び、ドイツのデュッセルドルフ、オランダのアムステルダムと回って、オランダのアイントホーフェン、そしてスペインのバルセロナと強行移動したこともありました。車での移動は1回で500~600キロに及ぶこともあります。僕1人ではとてもカバーしきれないので、今年の夏からバルセロナ在住のスタッフが加わって2人体制になりました。

    藤田 各国サッカー協会に選手拘束力があるのは、FIFA(国際サッカー連盟)が認定する国際公式試合がある週に限られます。五輪にはそうした拘束力がなく、五輪に選手を出場させるには所属クラブの理解が不可欠。だからこそ、日ごろから各クラブとコミュニケーションを取り、協力してもらえるようにすることがとても重要なんです。五輪代表の森保一監督(日本代表と兼務)が求める選手を呼べるよう、僕はその下地作りに全力を注ぐつもりです。

    藤田 本当は毎回欧州から戻ってくる予定ではなかったんです(笑)。でも、何度か代表活動に参加するたびに、スタッフや選手とコミュニケーションを取ることが増え、JFAの関塚隆技術委員長や森保監督と話し合って帯同することになりました。日本代表と五輪代表の活動期間が重複するようになり、スタッフと選手の間で、より密なコミュニケーションを取る必要が出てきたのも理由の一つ。今はチームの潤滑油的なポジションに収まったのかなと感じています。

    藤田 現役時代に知り合ったVVVフェンロ(オランダ)のハイ・ベルデン前会長に、指導者になりたいという思いを伝え、フェンロに行くことになりましたが、オランダでの就労ビザがなかなか取れませんでした。ユトレヒトでプレーした選手時代は、クラブの手続きでビザを取れたんですが、指導者としてだと話はまったく違う。13年の1年間は日本にとどまって策を講じました。

    藤田 起業ビザを取得することにしたんです。「フジタ・スポーツ」という法人を登記することにし、日本サッカーへのコンサルティングや、ハイさんの本業である物流事業の支援などを入れて事業計画書を提出したところ、ようやくOKが出ました。今となればそんなに難しいことではないですが、当時は情報もなかったので大変でしたね。

    藤田 日本での指導者のライセンスと、欧州のライセンスに互換性がないことも一つの理由です。僕は12年、Jリーグや日本代表の監督を務められるJFA公認の「S級コーチライセンス」を取得しましたが、欧州では日本のライセンスが認められておらず、現状では欧州のライセンスを別に取得しなければなりません。これがビザの審査にも影響してしまうんです。

    藤田 半年間の試行期間を経て、14年夏に正式にコーチに就任しました。居残り選手の練習などから始まって、トレーニングも担当するようになり、対戦相手のスカウティング(戦力・戦術などの分析)や監督のフォローなども任されるようになりました。スタメンや戦術を決める場で意見を出すことも増え、周囲から信頼されていることが感じられました。

    藤田 待ち続けても、ライセンスの問題が解決しなかったからです。オランダ協会に日本のライセンスを認めてもらえるよう掛け合っていたのですが、「検討する」と言われるばかり。あえてアジア人に指導者の資格を認める必要はない、という考えもあったでしょう。オランダのプロ指導者はとても狭き門。アマチュアから10年がかりで1、2部クラブのトップコーチになる人も少なくないですからね。

    藤田 それは、欧州のライセンスがアジアで…

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