食生活が飛躍的に多彩に 江戸時代の楽しさ活写=今谷明
有料記事
食生活の歴史の上で、江戸時代の果たした役割は大きい。平安時代、摂関家の大饗(だいきょう)から始まった饗応儀礼は、室町期の椀飯(おうばん)や御成(おなり)(大名による将軍への饗応)で頂点に達したが、その一端が庶民層に達したのは、なんといっても近世であった。
室町時代までは、朝夕(ちょうじゃく)と称して、日本人は一日二食であったことはよく知られる。それが大工等の重労働者の中食(ちゅうじき)に始まり、禅院のお斎(とき)など三食が普及し、江戸期の三度の常食に至った。
安藤優一郎著『大江戸の飯と酒と女』(朝日新書、810円)は、蕎麦(そば)、寿司、天ぷらなど、江戸で創出された料理と調味料の種々相、また砂糖の国産化、屋台や居酒屋など庶民の飲食参加の状況を実証的、多面的に展開した大変楽しい本である。
残り578文字(全文926文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める