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週刊エコノミスト Online 勝つ 負ける地銀

“無風”の減益 「益出しのネタ」尽きる “苦肉”の店舗戦略に注目=大槻奈那

横浜銀も店舗改革を進める
横浜銀も店舗改革を進める

 地銀の2020年3月期中間決算を受け、各メディアは「7割が減益」とネガティブに報じた。しかし、地銀の株価の反応は悪くなかった。各行は通期見通しでおおむね最終損益を「ほぼ横ばいから若干の減益」と想定しており、上期の通期計画達成率で前年並みの5~6割を確保できたためだ。ある意味で“順調な悪化”と言える。<勝つ地銀 負ける地銀>

 だが、悪化を「外部環境」のせいにはできない。貸出金利回りは11年連続の低下となった2019年3月期から、さらに3ベーシスポイント(1ベーシスポイント=0.01%)程度低下した。この間、政策金利も東京銀行間取引金利(TIBOR)も、ともに同期間中に下がっていないにもかかわらずにである。

(出所)日本銀行
(出所)日本銀行

来店者数「10年で4割減」

 貸し出しの増加もパッとしない。前年同期比の貸出残高の増加は2.5%にとどまった(図)。個人については近年盛んだった「カードローン」や「投資用不動産融資」が沈静化し、企業については無借金企業が増えているためだ。まれに、ソフトバンクグループなどのように大規模な資金ニーズもあるが、これらは主に大手行の独壇場だ。

 従来利益をかさ上げしていた投信解約益も減少している。これまでの「益出しのネタ」が尽き、中間決算は「無風の減益」という印象である。

 こうした“もうけの低下”に対し、地銀は、この上期に前年同期比1%程度の経費圧縮に成功した。これは、皮肉なことだが、昨年来、「働き方改革による残業代減少」という追い風が吹いていることが大きい。

 それでも、いくつかの地銀では、新たな経費圧縮策が本格化しつつある。一つは大手地銀を中心に進む「デジタライゼーション」(デジタル化)だ。

 例えば、静岡銀行は、デジタル技術活用により、紙、印鑑、現金・現物、窓口端末、カウンター等多面的な圧縮を進める。広島銀行は、事務量減少による役職者の削減まで踏み込んでいる。山口銀行は空きスペース活用の一環で7月にスペイン料理店を誘致した。

 もう一つは店舗の新たな活用だ。昨年、金融庁は銀行に「平日休業」を認めた。これを受け、今年度から店舗で平日休みや昼休みを設ける地銀が出始めた。南都銀行(奈良県)では近隣の店舗を整理しつつ4店舗で、地銀初の隔日営業を行う。郵便局に共同窓口も設置する方向だ。横浜銀行では、テレビ窓口などを活用したミニ店舗への移行を進めつつ、来店者数が少ない店舗に昼休みを導入した。

 地銀の来店者数はこの10年で4割減少している。日銀は10月24日発表した金融システムリポートで、地銀の経営維持に必要な取り組みとして「10年間で経費1割減」を示唆した。

 しかし、地元からの反発も予想されるため、大手行のように店舗を完全に撤収するのは容易でない。店舗の効率運営は「苦肉の策」だが、減少するトップライン(売上高)と、増加する与信費用の影響を最小限に食い止めるには、まずはこうした経営効率化に注力するしかないだろう。

 ただ、店舗に来る顧客は相対的に高齢者が多いため、性急な変革は混乱を引き起こす懸念がある。ボトムライン(純利益)を心配するあまり、トップラインを支える地元顧客のロイヤルティー(満足度や信頼)に影響が出るようでは本末転倒だ。来期以降、これらの施策の是非が明らかになるだろう。

(大槻奈那、マネックス証券チーフ・アナリスト)

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