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週刊エコノミスト Online 勝つ 負ける地銀

インタビュー 石田建昭 東海東京FH社長 グループで銀行、保険機能を提供する体制が必要だ

石田 建昭 東海東京フィナンシャル・ホールディングス社長
石田 建昭 東海東京フィナンシャル・ホールディングス社長

── 他の証券会社に先駆けて地銀との連携を進めてきた。

■地銀は今、(1)人口、(2)産業、(3)金利──の三つが低水準に沈む「3低」環境の中で、経営が圧迫されている。収益源として証券業務の拡充は課題の一つだが、銀行業務以外に専門性がなく、証券業務では経験もインフラも経営資源も少ない。そこで、地銀の証券業務を支援するため、2007年に提携した山口フィナンシャルグループを皮切りに、複数の地銀と共同で合弁証券を作ってきた。<勝つ地銀 負ける地銀>

── 地銀と組むメリットは。

■我々証券会社も、単一ビジネスでは多様化している顧客ニーズに応えられない。例えば、01年に始めた、働く女性の資産形成を応援するプロジェクト「乙女のお財布」では、休日に投資のアドバイスなどを行うセミナーを開くと、定員の数倍も応募があったが、口座を開いてくれた参加者はほとんどいなかった。

 参加者のニーズを調べたところ、優先順位が高いのは医療保険や住宅ローンなどで、投資はずっと後だった。つまり、顧客ニーズを満たすには、働く女性に限っても証券だけでは足りない。グループとして銀行機能や保険機能も提供する体制が必要だ。

── なぜ、スマホアプリやスマホ専業証券に乗り出したのか。

■年齢やライフステージに応じた、顧客の多様なニーズに応えるには、富裕層、法人、シニア、そしてマス層といった顧客ごとにビジネスモデルを変える「セグメンテーション(細分化)戦略」が不可欠だ。ターゲットを明確にしようと提携先の地銀と話している。その一環として「デジタライゼーション(デジタル化)」がある。

 インターネット世代など次の資産形成層を狙うためのインフラが必要だ。そこで、資産管理や投資の機能を備えたスマホアプリと専業証券をパッケージ化。提携先の地銀が顧客に提供できるようにする。デジタル化はコストと時間がかかるが、クラウドなど新技術を利用するとコストも従来の半分以下で済む。収益化は可能だ。

自動化やシェアが大事

── 地銀から見て東海東京を選ぶメリットは。

■まず、対面販売のノウハウが充実していること。そして大手証券5社と並ぶレベルの市場部門を持ち、有益なマーケット情報を提供できる専門性の高さだ。いくらデジタル化が進展しても対面がなくなることはない。

 もう一つ独自の強みとして、当社は旧東海銀行(現三菱UFJ銀行)の出身者を多く抱えており、証券と銀行、両方のカルチャーを知っている。損益計算書を重視する証券は、保有する株式や債券の価格を左右する市場の動きに敏感だ。一方、銀行はバランスシートを使って、法人や個人顧客の資産を長期で運用する。両方の長所を取り入れることで、今、顧客に必要なものは何か判断する。

── 証券会社間で地銀の争奪戦になったとき、強化すべき点は。

■自動車業界で言う「CASE(ケース)」と同じようなことが、金融にも言える。つまり、コネクテッド(C)は地銀同士の「連携」や、オートノマス(A)はロボットアドバイザーなど人工知能(AI)活用による「自動化」が大事だ。なかでも重要なのはシェア(S)で、収益源が限られる中、例えば内部管理システムやバックオフィスなどを共有する仕組みを充実させることが、地銀に選んでもらう際の鍵になる。あくまで主役は地銀で、当社はサポートに徹する。

(石田建昭、東海東京フィナンシャル・ホールディングス社長)

(聞き手=大堀達也・編集部)

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