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アベノミクスの恩恵 富裕層に一辺倒=浜田健太郎/岡田英

    1件当たりの販売額が1000万円を超えることも(カッシーナ・イクスシー青山本店)
    1件当たりの販売額が1000万円を超えることも(カッシーナ・イクスシー青山本店)

     2012年12月以来の戦後最長の景気拡大を享受する日本経済。19年は米中対立のあおりで輸出、輸入とも低迷する中、消費増税にも大きな腰折れがなかった個人消費がけん引役となった。

    (出所)日本自動車輸入組合
    (出所)日本自動車輸入組合

     それを象徴するのが、高級輸入自動車の販売だ。外国自動車メーカー日本法人が加盟する日本自動車輸入組合(JAIA)によると、販売価格が1000万円以上する超高級車の販売台数は、第2次安倍政権がスタートした年の12年は9924台だったが、18年には2万1046台と倍増した(図1)。

    高級外車バカ売れ

     イタリアの超高級自動車ブランド、マセラティは最も安い車種が875万円(税込み)、平均価格は1550万〜1600万円に達する。それにもかかわらず販売台数は12年の311台から18年は4・6倍の1453台に跳ね上がった。「顧客には医師、弁護士、企業経営者、起業家などが多い。大型セダンを購入する顧客の平均年収は3100万円」(マセラティジャパンの広報担当者)という。

     高級車の代名詞、独メルセデス・ベンツの19年11月の販売台数も前年同月比11%増の6051台と11月単月では過去最高を記録。消費増税の影響を感じさせない好調さを示している。

     高級家具の販売も個人消費の好調が垣間見られる分野だ。そうした事業者の一つ、カッシーナ・イクスシー(東京都港区)の担当者は、富裕層を中心とした個人向け販売が堅調で、「リビングセット、ダイニングセットといった単品販売から最近はカーテンやラグ・照明も含めた一式提案での販売が増え、18年ごろから1件当たりの販売額が1000万円を超える商談も増えてきている」という。

     また、「五輪特需」も追い風で、「商業施設、空港、ホテルを中心とした法人需要を中心に販売が伸びている」と話す。同社は五輪に向けた空港のリニューアル工事に伴う椅子を受注。連結売上高は18年12月期まで4年連続で増加しており、19年12月期も前年同期比2・1%増の増収を見込む。

     19年11月20日、通算在職日数が憲政史上最長になった安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」は、前例のない大規模な金融緩和により、株価と不動産価格の上昇を促し、その資産価格効果により、経済を活性化させるところに特徴がある。不動産経済研究所によると、東京都区部の平均マンション価格は19年10月に7002万円で、12年末(5283万円)から33%上昇した。必然的に、富裕層ほど、その恩恵を受けやすくなる。JAIAの会員業務部長、小野寺誠氏も「アベノミクスの恩恵は当然、輸入車販売に及んでいる」と認める。

    割りを食う普通の人々

    (注)金額はグループごとの1世帯当たり平均所得額。▲はマイナス (出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」(2018年)より編集部作成
    (注)金額はグループごとの1世帯当たり平均所得額。▲はマイナス (出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」(2018年)より編集部作成

     アベノミクスのもう一つの特徴は「中間所得層に厳しい」ことにある。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、全世帯の所得の高さを5等分して五つのグループに分けて、最も高いグループを「高所得者層」、3番目を「中間層」、5番目を「低所得者層」に分けて、12年から17年までの増減率をみると、高所得者層が大きく伸び、中間層が低下している(図2)。

     安倍政権のもとで進んだ企業統治(コーポレート・ガバナンス)改革により、企業が株主の利益を重視するようになった結果、企業が生む付加価値に占める労働者への還元割合を示す「労働分配率」は、17年度に66・2%と過去43年間で最低となり、18年度も66・3%と横ばいで推移している(財務省「法人企業統計年報」)。

     国民のほとんどは高級車や高級家具とは縁がない。所得が上がらない中で消費税率が上がれば消費は当然、冷え込む。総務省が12月に発表した10月の2人以上世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は27万9671円で、物価変動を除いた実質では前年同月比5・1%減。14年4月の前回増税時(4・6%減)より下げ幅が大きかった。こうした「消費の二極化」もアベノミクスの功罪だろう。

     とはいえ、市場関係者の間では、来年夏の五輪までは景気拡大は続くとの見方が大勢だ。米中貿易摩擦の行方は読みにくいが、米連邦準備制度理事会(FRB)が予防的利下げを実施し、米国や新興国経済の堅調で、輸出の回復が見込まれる。20年は5G(第5世代移動通信規格)の立ち上げに向けた投資が本格化し、関連する電子部品や半導体製造装置といった日本企業が強みを持つ産業分野で回復が見込まれている。労働力不足を補うための企業の省力化投資も活発だ。

    懸念は金融ショック

     さらに、政府は12月5日、事業規模で総額26兆円、財政措置で13兆円規模の経済対策を打ち出した。政府では21年度までに実質GDP(国内総生産)を1・4%押し上げると試算する。大和総研シニアエコノミストの小林俊介氏は、「今後見込まれる消費増税のマイナス効果と、東京五輪後の公共投資の落ち込みを相殺するために、対策の効果を薄く広く延ばす編成になっている」と指摘する。

     唯一の懸念は、好調な個人消費の裏付けになっている足元堅調な株式や不動産相場が、何らかのショックを契機に下落に転じることだ。

     資本主義の限界を唱える経済学者の水野和夫・法政大学教授は、20年の日本経済の展望について、「いつ世界的な金融ショックが起きるかが焦点。原油の急騰や自然災害でもショックは起こる」と指摘する。アベノミクスの「三本の矢(金融緩和、財政出動、構造改革)」のうち、構造改革は進んでいない。問題先送り体質が染みついた日本経済に、ショックへの耐性があるのか、一抹の不安も残る。

    (浜田健太郎・編集部)

    (岡田英・編集部)

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