WTO紛争処理の機能停止 「存続の危機」を改革の契機に=岩田太郎
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米トランプ政権は2019年12月、各国間の貿易紛争を解決するために設けられた世界貿易機関(WTO)の「最終審」である上級委員会に、新しい委員が補充されることを拒絶。これにより、WTOは各国間の紛争処理ができなくなり、議論が盛り上がっている。
米外交サイト「フォーリン・ポリシー」のキース・ジョンソン特派員は12月9日付の記事で、「米国はWTO発足当初から、原価以下で輸出を行うダンピング行為には米国内法とWTOの規則にのっとって報復関税を課すなど、自国に有利な貿易政策が展開できると踏んでいたが、それは誤解だった。米国は上級委員会で、(報復関税)紛争にことごとく敗訴してきたからだ」と、米政権の「WTO潰し」の背景を説明した。
米シンクタンク、ルーズベルト研究所のトッド・タッカー研究員は12月9日付の米『ザ・ネーション』誌電子版で、「WTOでの反ダンピング法の敗訴が積み重なるにつれ、保護主義とは程遠い立ち位置のブッシュ政権がWTOの『司法積極主義』を非難し始め、続くオバマ政権は委員補充を拒むようになった」と述べ、米国とWTOの争いはトランプ政権に始まったものではなく、根深いと解説した。
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週刊エコノミスト
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