週刊エコノミスト Onlineワイドインタビュー問答有用

アフリカに魅せられて=藤井千江美 NPO法人HANDS理事、看護師/778

    「モリンガ農園で最期を迎えられたら幸せだなと思います」 撮影=蘆田 剛
    「モリンガ農園で最期を迎えられたら幸せだなと思います」 撮影=蘆田 剛

     西アフリカのシエラレオネやブルキナファソで保健医療の支援活動に取り組んできた藤井千江美さん。その熱い思いと人並み外れた行動力の源泉には、いったい何があるのか──。

    (聞き手=大宮知信・ジャーナリスト)

    藤井 NPO法人HANDS(ハンズ=Health and Development Service)では昨年4月から、シエラレオネ北西部のカンビア県で、小学校5カ所の校庭に農園を作り、子どもたちが野菜と一緒にモリンガの木を栽培する「モリンガ・スクールガーデン」というプロジェクトを始めました。そこで収穫した野菜とモリンガの葉を学校給食に加え、子どもたちの栄養改善に役立てようという計画です。

    藤井 すでに現地でモリンガの栽培が始まっていますが、昨年の雨期は雨量が多く、昨年9月に現地へ行った際には、根腐れしたり成長が止まったりしたモリンガもありました。ただ、雨期が終わりに近づいて新芽が出始め、シエラレオネでは9月に種まきをするのが最適だと分かったのは収穫です。また、国連世界食糧計画(WFP)と連携し、各小学校の学校給食を調理する女性や先生が参加したモリンガ料理講習会も開きました。

    藤井 これは3年間のプロジェクト。1年目は学校の子どもたちと先生が中心になってスクールガーデンをきちんと運営管理し、学校給食に取り入れてもらうこと。2年目は母親を巻き込んでモリンガ野菜農園を作り、3年目はその農園で栽培されたモリンガの葉をお茶やパウダーなどの商品にして、現金収入が得られるようにすることが目標です。今年3月に現地へ再び行き、スクールガーデンの状況を確認したいと思っています。

    藤井 シエラレオネでの1年目の活動資金は友人が出資してくれたのですが、足りない分は(インターネット上で資金を募る)クラウドファンディングで調達しました。目標額の92万円を上回る101万4000円が集まりましたが、2年目の活動資金はまだ準備できていないんです。そうした活動を支援している日本企業に援助を申請していますが、競争率がすごく高くて。どうしようかと頭を悩ませているところです。

    藤井 08年5月から3年間、JICA(国際協力機構)の保健プロジェクトメンバーとしてシエラレオネに派遣された時のことです。町を歩いていると、若者から仕事はないかとか、子どもがケガをしたので薬はないかと声を掛けられるんです。お金がないので病院に連れて行けないし、十分な食事も与えられない。保健や医療も大事だけれど、働く場所があって仕事ができることが一番必要なんじゃないかと感じていました。

    藤井 シエラレオネの事務所の同僚の血圧が高いので、毎日測定していたのですが、ある時から血圧が大きく下がるようになりました。何か薬を飲んでいるのか聞いたところ、「モリンガって知っているか」と言うんです。それまで私はモリンガのことを何も知らず、「何やねん、それ」って。私自身もモリンガのお茶を飲み始め、効用を実感して関心を持ち始めました。

    藤井 JICAの仕事を終えた後、モリンガで何かできるんじゃないかと考え、シエラレオネで知り合ったある日本人のコンサルタントと一緒に、ブルキナファソで1000個の種をまきました。また、11年10月にはブルキナファソから輸入したモリンガのお茶を日本で販売しようと、日本で「モリンガの郷(さと)」を個人で起業しました。

    藤井 12年8月にブルキナファソを豪雨が襲って、モリンガの苗がダメになってしまいました。また、一緒に活動していたコンサルタントも急死してしまい、「もう無理や」と。ところが、翌年に現地の酋長(しゅうちょう)の長男モハメッドさんが同じ場所に種をまいて、モリンガが育っている様子を写真に撮り、メールで送ってきてくれました。私ももう一度、彼と一緒にやってみようと考え直したんです。

    藤井 確かに日本でモリンガはブームになっていますが、最近は沖縄などあちこちで栽培されるようになりました。競争が激しくなる中で、ブルキナファソから仕入れるモリンガは、どうしても輸送費がかかってコストが合わない。私自身は駆け引きをしたりするビジネスがものすごく苦手で、モリンガの郷の収支は完全に赤字でした。モリンガの郷は18年末で廃業しています。

    藤井 ようやく17年ごろから 現地の会社に少しずつ利益が出始めて、従業員の給料も払えるようになりました。お茶だけでなく粉末パウダーやティーバッグなどを商品化し、すごく売れています。モハメッドさんがうまくやっているので、ブルキナファソの農園には私の力はもう必要ない。モハメッドさんにはシエラレオネのプロジェクトで講師として指導もしてもらっており、今後も一緒に仕事を続けていきます。

    藤井 母が教育に厳しい人で、テストで10…

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