週刊エコノミスト Onlineワイドインタビュー問答有用

異文化での挑戦=吉田達磨 サッカー・シンガポール男子代表監督/779

    「ライオンズ」の愛称で親しまれるサッカーのシンガポール男子代表。近年はタイやベトナムに歯が立たなくなっていたが、吉田達磨さんが監督に就任後、生まれ変わりつつある。

    (聞き手=元川悦子・ライター)

    吉田 ここまで5試合を戦って2勝1分2敗の勝ち点7で、ウズベキスタン、サウジアラビアに続いています。僕らのFIFA(国際サッカー連盟)ランキングは、イエメン、パレスチナを含めたD組5カ国中で最下位(19年12月時点で157位)。1勝するのも本当に大変ですが、ここまでは善戦しています。昨年11月に中立地バーレーンでイエメンに2-1で勝ち、中東で中東勢に勝利したのは十数年ぶりらしく、選手たちも大喜びしていましたね。

    吉田 ソロモン諸島とミャンマーとの親善試合2連戦が最初の仕事。選手選考はコーチングスタッフにお願いして、いきなり試合に挑みました。ただ、その時期はラマダン(断食)の真っただ中。シンガポールの人口は570万人で、中華系が74%、マレー系が14%、インド系が9%、その他外国人が3%という民族比率ですが、サッカーをやっているのはイスラム教徒のマレー系がほとんどなんです。

    吉田 イスラム教徒の彼らはラマダン期間は日没まで何も食べず、水さえも飲まない選手もいる。信仰を守りながら、猛暑の中でピッチに立ち、僕の指示を聞いてベストを尽くそうとしていた。真摯(しんし)な姿勢を見て、本当に素晴らしいなと感じました。結果は1勝1敗でしたが、最初の活動から選手たちとの信頼関係が少しずつ築けたと感じました。

    吉田 そうですね。2次予選初戦だった9月のホーム、イエメン戦はボール支配率70%でパスも600本、ゴール前への攻撃回数も30回以上と、かなり攻撃的に戦いました。結果は2-2のドロー(引き分け)。それでも「ライオンズ(シンガポール代表の愛称)が変わったぞ」多くの人々が驚いたようです。その5日後のホーム、パレスチナ戦を2-1で勝利してファンに認めてもらえたのかなと感じます。

    吉田 シンガポールは10年代初頭までは、東南アジアである程度の地位を築いていたものの、タイやベトナムが経済成長を背景にサッカーも急速に強くなり、大きな差を付けられてしまいました。国民の「どうせライオンズは期待できない」という諦めムードを感じて、関係者も自虐的になり、選手も自信喪失気味だった。そんなネガティブなムードが変わりつつあるのは確か。前向きな手ごたえを感じます。

     Jリーグ初期の1990年代に活躍した吉田さんは、柏レイソルやモンテディオ山形などで活躍したテクニックあふれるミッドフィルダー(MF)。「選手生活の最後は海外で」と向かった先がシンガポールだった。豪州のクラブのトライアル(選手選考)を受けるつもりで、02年夏に立ち寄ったジュロンFCと1カ月だけ契約して2試合に出場。それが現役最後の所属先となった。その土地に17年後、再び自分が赴くとは「想像もしなか…

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