「お仕事」を描く=上野歩・作家/780
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旋盤、金型、ネジ──。下町の町工場を舞台に、さまざまな物語を紡ぎ続ける上野歩さん。作家として10年間のブランクの後にたどりついたテーマは、生まれ育った環境そのものだった。
(聞き手=竹縄昌・ジャーナリスト)
「町工場が集まれば、一つの巨大な工場に」
「実家はプラスチックの成形工場でした。向かいと裏はプレス屋、隣はメッキ屋」
── 昨年3月に刊行した小説『就職先はネジ屋です』(小学館文庫)が好調ですね。旋盤工が主人公の『削り屋』、金型メーカーの若い女性社長を描く『わたし、型屋の社長になります』(いずれも小学館文庫)、女性ヘラ絞り職人が登場する『墨田区吾嬬町発ブラックホール行き』(小学館)と、下町の中小製造業を舞台とした作品を2015年以降、続けて発表しています。
上野 一番最初に旋盤の話を書いて、次に金型、ヘラ絞りと、(世間には)分かりにくい仕事を紹介しようと書いてきたんですが、やはり分かりづらいところもあったようです。“ネジ屋”を選んだのは、誰でもネジは見たことがあり、一度ぐらいネジを締めたり、ネジ打ちしたことがあると思うので、分かりやすいんじゃないかと考えました。
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週刊エコノミスト
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