教養・歴史書評

『大学はもう死んでいる?トップユニバーシティーからの問題提起』 評者・将基面貴巳

     本書は、オックスフォード大学教授の苅谷剛彦氏と東京大学教授の吉見俊哉氏が現代世界と日本における大学問題を率直に語り合った記録である。センセーショナルな書名とは裏腹に、特に現代日本の大学が抱える諸問題を冷静にえぐり出し、克服すべき課題と指針を見事に示している。

     欧米に比べて後発型の近代社会である日本は、苅谷氏のいう「キャッチアップ型」人材育成に大学教育の重点を置いてきた。欧米に「追いつく」ためには幅広い最新の知識を効率よく伝達することを重視してきたというわけである。しかし、こうした伝統に立脚する日本の大学教育の内容こそが、現在問い直されねばならないと本書は力説する。

     そこで二人の論者は、大学が学問的に考え抜く力をつけさせる場であることを強調する。日本の大学教育は物事を分析し問題を発見・解決する「クリティカル・シンキング」を鍛えなければならないというのだ。英語圏の大学で教える評者にとって「クリティカル・シンキング」とは大学教育の中核をなすとはいえ、ほとんど陳腐な決まり文句であるとの印象がある。同様の認識が日本では広く共有されていない、という本書の指摘には驚きを…

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