教養・歴史書評

『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』 評者・新藤宗幸

著者 吉田千亜(フリーライター) 岩波書店 1800円

死をも覚悟した壮絶な使命 当事者の声、丹念に取材

 東日本大震災が未曽有であるのは、大津波と原子力発電所の過酷事故が同時に発生したことだ。とりわけ原発の所在する福島県双葉郡地域は、まさに二重の災禍に見舞われた。本書は、6町2村から成る双葉消防本部の「死の恐怖」に脅かされながらの果敢な活動を、消防士たちの証言をもとに再現する。

 2011年3月11日、14時46分、マグニチュード9・0の巨大地震が発生した。先立って緊急地震情報が頻繁に出されていたが、いずれも「空振り」に終わっていた。だから「また鳴ったな」と思った瞬間、想像を絶する地震が襲った。地震から1時間後には非番の職員も加わり107人の態勢となる。被害調査中に大津波が襲来する。住民に避難を呼びかけ、取り残された住民を救出し、けが人や重篤な病人を救急搬送する。

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