新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史 書評

中国 忘却される天安門事件。政府と人民は共犯=辻康吾

 新型コロナ肺炎について、その沈静化や生産回復を伝える公式情報と、人気のない街頭や路頭をさまよう労働者の姿を伝えるユーチューブの動画など、真偽不明のまま膨大な情報が流れている。そんな中で林慕蓮著の『重返天安門』(2019年5月 台北・八旗文化)を手にした。書名の通り同書は1989年6月の天安門事件を回顧し、あの運動に加わった人々のその後を追跡した点で興味深いが、私が注目したのは、天安門事件の名の通り、世界の目が北京の天安門広場とその周辺での虐殺に集中している中、北京同様の動乱が中国各地で発生していたこと、四川省の省都の成都でも虐殺事件が発生していたことを詳細に伝えていることであった。

 天安門事件当時、全国百余の都市でデモが発生、北京同様に暴力的に鎮圧されたと言われるが、BBCなどの記者として中国に長期滞在した著者は、各地の情勢について丹念に資料をあさり、人々の重い口を開かせてきた。成都では高級ホテルの錦江賓館(きんこうひんかん)が虐殺の舞台となった。ホテルの面する大通りの先、天府(てんふ)広場には数十万の市民、学生が集まり、1700人余がハンストに突入していた。

残り456文字(全文944文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事