教養・歴史書評

中国 忘却される天安門事件。政府と人民は共犯=辻康吾

     新型コロナ肺炎について、その沈静化や生産回復を伝える公式情報と、人気のない街頭や路頭をさまよう労働者の姿を伝えるユーチューブの動画など、真偽不明のまま膨大な情報が流れている。そんな中で林慕蓮著の『重返天安門』(2019年5月 台北・八旗文化)を手にした。書名の通り同書は1989年6月の天安門事件を回顧し、あの運動に加わった人々のその後を追跡した点で興味深いが、私が注目したのは、天安門事件の名の通り、世界の目が北京の天安門広場とその周辺での虐殺に集中している中、北京同様の動乱が中国各地で発生していたこと、四川省の省都の成都でも虐殺事件が発生していたことを詳細に伝えていることであった。

     天安門事件当時、全国百余の都市でデモが発生、北京同様に暴力的に鎮圧されたと言われるが、BBCなどの記者として中国に長期滞在した著者は、各地の情勢について丹念に資料をあさり、人々の重い口を開かせてきた。成都では高級ホテルの錦江賓館(きんこうひんかん)が虐殺の舞台となった。ホテルの面する大通りの先、天府(てんふ)広場には数十万の市民、学生が集まり、1700人余がハンストに突入していた。

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