教養・歴史書評

『賃上げ立国論』 評者・小峰隆夫

著者 山田久(日本総合研究所副理事長) 日本経済新聞出版社 1800円

政策当局、企業、労働者 すべてに届く具体案提示

 日本経済にとっての大問題は、賃金がなかなか上がらないことだ。賃金さえ上昇すれば、消費が伸びて景気の足取りはしっかりするし、サービス価格も上昇するからデフレからの脱却も進むはずだ。

 本書ではまず、なぜ賃金が低迷してきたかの原因が究明され(第1章)、そもそもなぜ賃上げが必要かが再確認される(第2章)。続いて、賃上げ実現型の社会経済モデルとしてスウェーデンの状況が解説され(第3章)、高賃金・高付加価値経営の実現が論じられる(第4章)。そして最後に「生涯賃金3割増プラン」というスローガンの下に、賃上げ実現のための包括的な政策が提案される(第5章)。賃上げ問題を論じ尽くしていると言えるだろう。

 評者が見るところ本書には次のような特徴がある。第一は、賃上げが企業の発展につながると説いていることだ。賃上げは当然ながら家計、国民経済にとってプラスだ。しかし、コストアップになるのだから、企業は簡単に賃上げに応じるわけにはいかない。しかし著者は、賃上げを行わないことが企業の競争力を削(そ)いでいるとする。不採算事業・低収益事業を存続させることにより、企業が時代の変化に取り残されるからである。一方…

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