片山杜秀の闘論席
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平安貴族は、穢(けが)れを遠ざけることに神経をとがらせた。人の死体、人の死んだ場所、流産をした女性とその家、人の血の流れた場所、動物の死体などは、平安時代には穢れていると認識された。
穢れたらどうするか。祓(はら)い清めなくてはいけない。例えば、人の死んだ家なら30日間家は閉じられ、その家の人は隔離された。犬や牛の変死した場所は5日間、立ち入り禁止になった。
また、平安時代に穢れは感染するとされた。感染するのは甲乙丙(1~3次感染)までで、丁(4番目)ならまず大丈夫という、判定の基準があった。天慶4(941)年の秋のことである。先帝醍醐天皇の女御(にょうご)、源和子(みなもとのわし)の家で流産した者があった。それを知らずに皇族の佐時王(すけときおう)が同家を訪ね、そのあと不用意にも二条の陽成(ようぜい)院という朝廷の建物に出向いた。その日、たまたま陽…
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週刊エコノミスト
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