浜田健太郎/大堀達也
有料記事
編集部から
30年近く前のこと。取材記者として駆け出しのころ、担当企業の幹部自宅を訪問して取材せよと先輩記者に命じられた。当初はけんもほろろの反応ばかり。「なぜこんな野蛮なことを」と思ったものだ。
当時、新聞を賑(にぎ)わしていた企業再編の当事者だった幹部の自宅にあげてもらい、「目から鱗(うろこ)が落ちる」ような思いをした。昼間の取材では聞くことのできない、生々しいビジネスの現場の一端を話してくれたからだ。
夜討ち朝駆けの取材は、「他社よりも少しでも早く報じるため」の手段だった。IT革命で情報量が格段に増えた今では、時代遅れの手法に違いない。コロナ禍を経て絶滅必至の「あしき文化」かもしれない。ただ、こうした取材の積み重ねによって、特ダネをつかんだ時の「血管が広がるような興奮」をまれに経験した。オンライン取材の画面からはこの醍醐味(だいごみ)は得られないだろう。
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週刊エコノミスト
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