デジタルに無関心だった日本企業がコロナで変わった=間下直晃(ブイキューブ社長兼最高経営責任者)
── 新型コロナの感染拡大に伴い在宅勤務が広がった。ウェブ会議システムの利用が増えているのか。
■当社が提供するウェブ会議システム「V-CUBEミーティング」の利用時間は、今年4月に前年同月比で3・6倍、問い合わせは10倍に跳ね上がっている。オフィス以外の場所で仕事をするテレワークが普通の働き方になってきた。当社のビジネスはコロナ後の世界にぴったりと適合している。
── 6年前の本誌インタビューで間下直晃社長は、日本におけるウェブ会議の普及率は2~3%止まりで、啓蒙(けいもう)活動が必要だと指摘していた。
■今年は東京五輪が予定されていたし、働き方改革に関する政府の後押しもあったので、少しは変わってくると期待する一方で、なかなか変わらない日本企業には浸透しないと諦めのような気持ちもあった。コロナ禍のようなことが起きるとは想像しなかったが、状況は劇的に変わった。諦めずに継続して良かったと思う。
── ウェブ会議だとTeams(米マイクロソフト)やZoom(米ズーム・ビデオ・コミュニケーション)など外資系企業のサービス名をよく聞く。
■外資系の利用者の多くは無償サービスにとどまり、売り上げが立ちにくいのに対し、当社では無料は提供していない。有料のウェブ会議システムでは国内首位だ。セキュリティーやプライバシー、安定性を重視する顧客から対価を得てサービスを提供している。各社の(有料サービスの)機能に大きな違いはなく、ウェブ会議システム自体はコモディティー(汎用(はんよう)品)化するだろう。この領域で競争をするのではなくて、テレワークが普及したときに必要なものを提供する。
── テレワーク用のブース型個室を駅など公共施設やオフィスに設置している。
■「テレキューブ」というサービスだ。テレワークする場所がないという悩みに対応しようと公共空間用には18年11月から始めていて、6月1日時点で、公共の場に90台設置している。いま人気なのは、高層タワーマンションの多い東京・豊洲。タワマン住民がウェブ会議で回線を一斉に共有すると、同時に扱えるデータ量が細くなってインターネットが使いにくくなる。そこで、近隣ビルのロビーに設置してあるテレキューブの利用が伸びている。今後はマンションのロビーが設置場所として有望だ。オフィス用は559台設置している。
── ウェブ会議で出張が減る。鉄道や航空会社からライバル視されるか。
■航空会社やJR東海から「おたくは競合だ」と言われたことはある。私は年間で約40万キロ飛行機に乗っているので、人に会いに行く大事さは感じている。ただ、オンラインでも仕事ができると多くの人が気付いた。テレワークは継続されると思う。
── ビデオ会議は取材でも使えると確認したが、音声が遅延したり画像が乱れたりと、ストレスを感じることもある。
■技術は日進月歩だ。次の大きな変化は5G(次世代移動通信システム)だろう。現在の4Gに比べ伝送遅延が短縮されるので、使用上の感覚はかなり変わってくるはずだ。
(聞き手=浜田健太郎/岡田英・編集部)
(本誌初出 間下直晃 ブイキューブ社長兼最高経営責任者 ウェブ会議が急増 終わる「仕事は都心」 2020・6・30)
■人物略歴
ました・なおあき
1977年生まれ。慶応義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学専攻修了。慶応大学在学中の1998年有限会社ブイキューブインターネット(現ブイキューブ)を設立して社長就任。13年12月東証マザーズ上場、15年7月東証1部に市場変更。