国際・政治エコノミストリポート

福島の町職員が見たチェルノブイリ 「観光地化」に感じた伝承のジレンマ=喜浦遊

ゲート前の土産物屋ではガスマスクも売られていた 筆者撮影
ゲート前の土産物屋ではガスマスクも売られていた 筆者撮影

ツアーで巡った“ゴーストタウン” 「観光地化」に感じた伝承のジレンマ

 ウクライナの首都キエフからバスで2時間弱ほどで、チェルノブイリ原発から30キロ圏のゲートにたどり着いた。ここから先は居住禁止区域で入るには許可が要るが、道の両脇には土産物屋が並んでいる。外壁もごみ箱もベンチもテーブルも、アイスクリームの入った冷蔵庫も黄色に塗られ、「チェルノブイリツアー」と書かれた看板には三角の放射線マークまで添えられている。

 流れてくるポップな音楽にあっけにとられていると、通訳が「アメリカ向けの商売です」とささやいた。米国人を主な顧客にするツアー会社が運営しているらしい。チェルノブイリ原発事故を題材にした米放送局HBO製作のテレビドラマが昨年5~6月に放送されてヒットし、観光客が増えたのだという。想像を超える商業化を目の当たりにし、悲惨な事故から34年もたつと、こうも変わるのかと驚いた。

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