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週刊エコノミスト Online 闘論席

池谷裕二の闘論席

撮影 中村琢磨
撮影 中村琢磨

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、異例の世界的な自粛が始まり早くも半年近くがたつ。歴史的に見れば、これまでにも人類は多くの感染症に脅かされたが、今回は初めて経験するタイプのパンデミック(世界的大流行)である。高度な医学という「甘い蜜」を一度味わってしまった現代人は、かつてのように一気に感染を拡大させ、大きな痛みを伴いながらも、数年で終息させるという荒療治を受容できない。じわじわと迫りくる感染の恐怖に対して扉を閉ざしてじっと耐える以外の選択肢がなくなった。これは別の意味で、やはり大きな痛みを伴う戦略である。

 こうした未曽有の状況に至り、地球におけるヒトの営みの影響の大きさを実感した半年にもなった。経済活動の低下で、自然環境が澄みわたった。東京では紺碧(こんぺき)の空が連日のように広がった。星もよく見えた。観光客が激減したベネチアでは濁っていた運河が海底まで透き通った。インド北部からは約30年ぶりに遠くヒマラヤ山脈を望んだ。皮肉なことに、ヒトの姿が消えた街には、野生の動物が闊歩(かっぽ)し始めた。

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