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経済・企業 鉄道の悲劇

コロナによる減収が直撃……資金繰りが悪化している鉄道はどこか

大型連休が始まったものの、ガラガラの新幹線ホーム(JR東京駅で2020年4月25日)
大型連休が始まったものの、ガラガラの新幹線ホーム(JR東京駅で2020年4月25日)

 大手私鉄15社とJR東日本、JR西日本の2社の1月の鉄道収入でみると、前年同月を上回り増収となっているところがほとんどであり、国内の鉄道旅客事業への影響はまだ見えない。しかし2月に入ると、じわりと影響が出始め、3月以降、本格化する(表1)。(鉄道の悲劇)

収入半減の異常事態

 新型コロナ感染を回避するための政府、地方自治体による国民への不要不急の移動の自粛要請は、新幹線や複数の都道府県をまたぐ広域での鉄道事業を展開しているJR2社への影響が大きく出ている。

 JR東とJR西は3月に入ると、鉄道収入が前年同月比で半減し、4月には7割超の減収へと大幅に低下する。

 JR2社と比較すると、営業地域が狭い私鉄への影響は小さい。だが、私鉄最大の鉄道網を抱える近畿日本鉄道は、伊勢志摩など沿線に観光地を多く抱えていることも、移動自粛の影響が他の私鉄大手より大きく出ているようだ。4月の鉄道収入は前年同月比で6割超の減収だ。

 さらに、日本と海外との航空便の大幅な減少により、海外からの訪日客(インバウンド)の減少や国内から海外に渡る旅行客が大幅に減少した影響は、私鉄の中では空港路線を抱える京成電鉄や京浜急行電鉄、南海電気鉄道に出ていると考えられる。

 経済が成熟している日本にとって鉄道事業は平時に、きわめて安定した事業であり、2桁の減収率は想定しがたい事業だ。

 すでに2月時点での前年同月比で1割未満の減収幅すら、鉄道各社にとっては異常事態だった。ましてや鉄道収入が4月以降に半減するなど、民間企業としては対応がほとんど不可能な状態だろう。

東急は現預金7割増

 コロナ禍により、鉄道各社は急激な減収に見舞われ、資金繰りへの悪化が懸念される事態に直面している。3月以降は、鉄道事業への影響はすでに顕著になっていることから、3月末時点で鉄道各社の連結決算ベースでどの程度、現預金残高に影響が出ているのかを見てみよう。

 ここでは、私鉄大手14社とJR3社(JR東、JR西、JR東海)の17社を取り上げた。このうち3月末の現預金残高が、1年前よりも増えているのは、8社だった(表2)。

 このうち増加率が最大なのは東急。断トツの73・7%増だ。ただし、現預金残高が営業収益(売上高に相当)の何日分に相当するのかをみると、18・6日と私鉄として平均的な水準にとどまる。

 増加率で東急に続くのが、名古屋鉄道(32・5%増)、小田急電鉄(31・2%増)、西日本鉄道(29・5%増)である。

 一方で、3月末の現預金残高が前年よりも減少したのが9社ある。特にJR3社はいずれも2桁の減少率となっており、鉄道事業での減収の影響が大きいことがうかがえる。

 コロナ禍の影響は鉄道業のみならず、各社での小売業やホテル業などにも影響を及ぼしており、各社では当面、我慢の経営を強いられる。

 第2波の発生などコロナ禍の影響が続けば、現預金を確保するために借入金を増やしたり、資金の流出を抑えるために、当面の設備投資や新規事業の見直しを迫られる可能性がある。

(松田遼・金融アナリスト)

(本誌初出 財務分析 4月減収率1位JR西、3位近鉄 現預金増率1位東急、4位西鉄=松田遼 20200728)

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