池谷裕二の闘論席
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ラマヌジャンマシン――。そんな名前のついた人工知能(AI)が2月の『ネイチャー』誌に発表された。イスラエル工科大学のカミナー博士らの論文だ。
ラマヌジャンは実在の人物で、インドが生んだ夭逝(ようせつ)の異才数学者だ。彼は高等数学の教育を受けたわけではないが、なぜか毎日のように数学の定理が(本人の言葉を借りれば)女神からの啓示によってひらめく。ノートに記された4000ほど定理には、すでに知られている取るに足らない定理もあったが、未知の重要な定理も多く含まれていた。本人にはこれを数学的に証明する能力がなく、結局、周囲や後世の数学者たちが証明した。
今回発表された新しいAIに偉大な数学者の名が冠せられている以上、どんな性能を持つかは推して知るべし。ラマヌジャンよろしく数学の定理を提唱するのだ。ただし証明はしない(だから厳密には、定理ではなく、予想である)。つまり、プロの数学者向けに「問題集」を作成してくるAIなのだ。中には数学者が長年にわたって証明に挑戦してきた(いまだに解決されていない)定理もあれば、いかにも証明が難しそうな未知の定理もあ…
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週刊エコノミスト
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