コロナ禍で変わる! 飲食店の店づくり・サービス
昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食店の経営環境は依然厳しい状況が続いている。そうした中、来店者への安心の提供やサービスの向上、コスト削減など、各事業者は店づくりに知恵を絞っている。コロナ禍をどう乗り切り、アフターコロナにつなげていくのか。飲食店の担当者とソリューションを提供する事業者に聞いた。
収束が見えない新型コロナ。飲食店経営にも多大な影響
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年4月7日に首都圏など7都府県に初の緊急事態宣言が出されてから1年あまり。この間、感染者数が急増する第2波、第3波を経て、今年3月に2度目の緊急事態宣言が解除された後も、収束の見通しは立たず第4波の様相を呈して感染者が急増。4月23日には、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に3度目の緊急事態宣言が発令された。
この1年、住宅やオフィス、学校、商業施設、交通機関など、あらゆる場で感染防止対策が行われ、私たちの経済活動や日常生活は一変した。中でも飲食店は、リモートワークや外出自粛などといった人々のライフスタイルの変化に加え、自治体からの営業時間短縮や酒類提供の自粛要請などもあり、経営に多大な影響を受け、現在も厳しい状況が続いている。
ドトールコーヒーでは店舗の使われ方が地域により変化
このため、単に感染防止対策に注力するだけではなく、店づくりにおいても新たな状況への対応が迫られ取り組みが進められている。今回、そうした飲食店の中で、全国に1000店舗以上を展開するドトールコーヒーに、コロナ禍の店づくりについて話を聞くことができた。
同社、店舗運営本部設計部部長で店舗デザイン室室長の宇賀神紀彦氏によれば、新型コロナの感染拡大以降、立地や地域によって店舗の使われ方が変わってきているという。「リモートワークなどによりオフィス街に立地する店舗の売上が減少する一方、ガソリンスタンドに併設された店舗や、都市部から電車で30分圏内のエリアでは売上が伸びたり維持されたりしています」。
そこから見えてくるのは、車での移動が増えたことや、遠出はしなくなっても地域内では外出するといった、人々の行動の変化だ。また、住宅街においても、都市部と郊外では生活感に違いがあり、「既存店舗や新たに出店する地域のお客さまが、どんなふうに利用されるのか、今まで以上に配慮しながら店づくりを行っています」という。
店舗内のレイアウトや食事のメニューにも新たな工夫
具体的には、椅子の配置(レイアウト)や、一人席と二人席の比率、椅子と椅子の距離感、座ったときの目線の向きなど、その地域の人たちの使い方を考えた店づくりを行っているとのこと。加えて、これまで同社の店舗は移動中に立ち寄るといった「機会来店型」が多かったのに対し、コロナ禍ではそれが「目的来店型」に変わってきた地域が増えてきているという。このため、アフターコロナも見据え、店のデザインや食事のメニューなども、そうした変化に対応する工夫を進めていると宇賀神氏は話す。
もちろん、感染防止対策にも注力し、座席の間隔の確保や飛沫防止スクリーンの設置、こまめなアルコール消毒、従業員の検温などを徹底している。「ただ、当社では以前から店内環境にはかなり気を配っておりましたので、大々的に設備を更新するようなことは行っていません」とのことで、従来の取り組みをさらにレベルアップした対応といえる。
分煙環境に配慮しながら、密を避けるための人数制限も
店舗内の換気についても、新たに設備等を見直す必要はなかったと宇賀神氏は話す。ドトールコーヒーでは、店舗内の空気の入れ替えはもちろん、喫煙専用室や喫煙ブースについても、「その室内に向かう気流が、開口面の全ての測定点で0.2m/秒であること」という、改正健康増進法の技術的基準をすでにクリアしていたからだ。
変更点といえるのは、喫煙専用室や喫煙ブースの利用者に協力をお願いし、密を避けるための人数制限を設けたことで、「喫煙者の方にも非喫煙者の方にも、ドトールコーヒーを気持ちよく利用していただくという、当社の方針に変わりはありません」とのこと。そこには、全ての顧客に配慮する同社の姿勢が明確に示されている。
店舗づくりの事業者にも省力化や感染防止への多様な要望
一方、業務用機器を通してさまざまな施設へのソリューションの提供や、多様な業種・業態の店舗づくり、さらに機器設置や施工後のメンテナンスなどを行っているFujitaka(フジタカコーポレーション)にも話を聞いた。同社では、コロナ禍への対応についてさまざまな顧客から要望が寄せられていると、取締役で店舗事業本部長の菊田資士氏は話す。
そうした中で、飲食店からの要望が多いのが、省力化・省人化によるコスト削減や非接触に役立つ券売機の導入と、それに伴う店内のレイアウト変更だという。また、コロナ禍の目立った変化としては個室が求められるようになってきていることで、「例えば、鍋料理などでもより安心してみんなで食べられる単位は家族なんです。このため、個室という環境が求められているようです」。
Fujitakaでは、さまざまな施設の入退場ゲートも扱っているが、コロナ禍以降で増えているのが発熱の有無で入場を管理できるシステムの追加で、「そこに三密の防止というニーズも加わり、入場者数のカウント機能も追加することで、美術館などの入場制限にも対応しています」という。
コロナ禍に対応し、1人用の喫煙ブースも新たに開発
さらに、飲食店において集客に大きな影響のある喫煙環境についても、Fujitakaではオリジナル工事による喫煙室の設置に加え、店舗のレイアウトが変更になっても移設が可能な喫煙ブース「SMOKE POINT(スモークポイント)」を提供している。同社の製品は、前出のドトールコーヒーでも導入しており、喫煙者と非喫煙者の共存に役立つものだ。
同社の喫煙ブースの大きな特徴は、屋外へのダクト工事が不要なため設置がしやすく、コストも抑えられる点だ。またコロナ禍にも対応し、1人用の喫煙ブースも開発。加えて、従来の3~6人用の喫煙ブースも定員を2人として、密を回避して使われるケースが多いということで、飲食店の多様なニーズに応えている。実際、同社の喫煙ブースの出荷台数は、2020年は1000台に迫り、前年から大きく増加している。
暮らしに潤いを与える場として、これからも大きな役割
今回、一例ではあるが、コロナ禍における飲食店の店づくりにスポットを当て、感染防止対策に取り組みながら利用者のニーズに応えている飲食店と、そうした飲食店にソリューションを提供している事業者を紹介した。
そこから見えてきたのは、コロナ禍においても、飲食を楽しむことはもちろん、リラックスした時間や気持ちのリフレッシュなどを求め、さまざまな店舗に足を運んでいる人々の姿だ。飲食店もそれに応える努力を続けており、アフターコロナでは、私たちの暮らしに潤いを与える場として、より大切な役割を担っていくことは間違いない。1日も早い新型コロナの収束を願うばかりだ。(編集部)