小説家ならではの推理で読み解く「三国志」入門書=加藤徹
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宮城谷昌光『三国志入門』(文春新書、1045円)は、中国歴史小説の第一人者が、三国志の面白さと本質を初心者にも分かりやすく説き明かす、奥深い入門書だ。
著者は英国の作家E・M・フォースターの言葉を引用する。
「物語はand(そして)で続いてゆくが、小説にはwhy(なぜ)という問いかけがある」
古典小説『三国志演義』はもちろん、その基になった歴史書『三国志』にも「なぜ国(王朝)は興り、なぜ亡んでゆくのか」という問いかけが隠れている、と著者は指摘する。三国志の英雄たちの生き様も、小説的な「なぜ」という謎に満ちている。
『三国志演義』で悪役とされる魏(ぎ)の曹操は、史実でも後漢の王朝の権力を握った。曹操がその気になれば、後漢の皇帝を退位させ、自分が帝位につくこともできた。しかし彼はそうしなかった。なぜか。
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