イノベーションを生み出す、すごい“カイゼン”とは=岩尾俊兵
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「カイゼン」に見る経営戦略の差=岩尾俊兵
日本企業は、すでに立ち上がっているビジネスのちょっとした「カイゼン(改善)」を実施するのが得意だ、と言われることがある。実際に1980年代には、カイゼンが日本企業成長の一因として世界的に注目されるようになった。世界中でカイゼンについての本が売れ、オックスフォード英英辞典に「Kaizen」という単語が収録されたほどだ。
筆者が実際に日本の自動車メーカー各社の実態調査を行ってみると、各社が取り組んでいる「カイゼン」には大きな差異があることが分かった。カイゼンの中には、「イノベーション(技術革新)」と呼べるようなものさえ存在したのである。本稿では、イノベーションにつながるカイゼンとは、どんなカイゼンか考察する。
自動車メーカーを調査
筆者は、日本の自動車メーカーすべてに「傘下の各工場で行われたカイゼン活動のうち、1プロジェクトごとに投下した費用はいかほどか」という形で調査依頼を出し、そのうち3社から回答をもらった。その結果が表1である。
結果は一見するとどれも似通っている。だが、よく見てみると100万円以内のカイゼン活動しか行っていないX社に対して、1000万円超・1億円以内のカイゼン活動にも取り組んでいるY社およびZ社、という違いが分かる。
例えば、10万円以内のカイゼンは、部品棚に角度をつけて内部にローラーを敷き詰めることで、部品が自重で常に手元に送られてくるよう工夫するといったものなど。一方、1000万円超・1億円以内のカイゼンは、自動運搬ロボットを複数導入し、その動きを制御することで、部品運搬を無人化するといった取り組みなどをイメージしてほしい。
次に金額をベースにした「インパクト値」として重みづけしてみる。「10万円以内のカイゼン活動」が経営に与えるインパクト値を「1」とし、各カイゼン活動の投資金額が「10万円に対して何倍か」の倍…
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週刊エコノミスト
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