テレワーク「雇用の二極化」加速も 中間層の仕事喪失リスク
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テレワーク「雇用の二極化」加速も=酒井正
コロナ禍が長引くにつれ、企業におけるテレワークの実態が浮かびつつある。内閣府の調査では、今年5月時点でのテレワーク実施率は全体では3割程度だったが、情報通信業では8割近く、金融・保険・不動産業やその他の対事業所サービス業、製造業でも4割を超えていた。
テレワークを一旦は導入しても再び対面に戻した企業もあるが、業務がうまく回ることが分かった企業の中には、更なるオンライン化を着々と進めているところもある。特に、ウェブ会議は急速に普及が進んだとされ、対面による会議が当たり前という時代に戻ることはもはやないだろう。本連載7月6日号で筆者は、テレワークの普及が家庭内の育児時間の配分にもたらす影響について指摘したが、テレワークを含む業務のオンライン化が働き方全般にもたらす中長期的な影響についても考える時が来ている。
各種の調査から、賃金の高い業種ほどテレワークの実施率も高い傾向にあることが示されている。東京大学の川口大司教授とリクルートワークス研究所の茂木洋之研究員の分析によれば、テレワーク従事者の平均年収は、非テレワーク従事者に比べて100万円ほど高いという。だが、それでは賃金が高い労働者は、テレワークの恩恵にあずかっていることを単純に喜んでいてよいのだろうか。
コロナ前から進行
たしかにテレワークの実施率が低い業種では賃金が安い傾向にあることは事実だが、医療・福祉従事者や保育士など、非対面では実施しようがない仕事の中には、人工知能(AI)やロボットで代替することが難しく、雇用自体は将来も失われないと予想されるものも多い。
一方で、高度専門職などは別にして、比較的、賃金の高い仕事の中にも、金融・保険業などのように将来的にはAIなどに置き換えられて雇用が失われる可能性が高いとされるものが含まれる。
新型コロナウイルスの感染拡大という不可避の状況の…
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週刊エコノミスト
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