アフリカでモバイルマネー急拡大も用途は「個人間送金」止まり カギは「顧客サービス」=鈴木綾
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産業成熟のカギは顧客サービス
モバイルマネーの導入において、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)は世界の最先端を行っている。
モバイルマネーとは、銀行を介さずに携帯電話のアカウントを使って送金や貯蓄ができるサービスだ。携帯通信会社の国際業界団体であるGSMAによると、2011年時点で世界ユーザーアカウント数の82%はサブサハラアフリカにあり、そのうち96%は東アフリカにあった。その後、モバイルマネーは世界中に広がったが、それでも20年12月時点で全アカウントの半数はサブサハラアフリカにあり、総取引額でみても全体の64%を占めている。先駆者は、ケニアのM─PESA(PESAはスワヒリ語でお金の意味)である。
そもそもは、英国の援助機関である国際開発省が銀行口座を持たない貧困層の金融サービスへのアクセスを促進するため、民間企業を対象に研究助成を公募したのが始まりだった。03年に応札したボーダフォン社は、翌年から現地調査を開始。貧困層に一番身近だった小規模金融(マイクロファイナンス)の返済に携帯を利用するシステムを開発することとし、現地の通信会社であるサファリコム社、マイクロファイナンス機関、銀行とともに共同プロジェクトをスタートした。利用状況のモニタリングで、少額の送金や貯蓄手段としての需要が高いことが分かり、07年3月、正式にM─PESAをリリース。登録数は最初の1カ月で2万件、その後3年間でケニアの成人人口の半数に及ぶ1000万件に膨れ上がった。
銀行口座を持たない成人は、世界に17億人いるとされる(17年、世界銀行)。彼らは遠方の親戚に送金する場合、高い費用を払って送金専用サービスを利用するか、あるいは知人に現金を預けるという方法を採ってきた。貯蓄といえば、タンス預金か、家畜などいつでも換金できる物品への変換が一般的だった。日本にも昔からあった無尽講のように、仲…
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週刊エコノミスト
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