組織の「ズレ」を解きほぐし、新しい働き方を職場に定着させるには何が必要か=森永雄太
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従業員目線で「ズレ」解きほぐせ=森永雄太
多様な利害のマネジメントが必要
HRビジョン(東京・港区)が取りまとめた『日本の人事部 人事白書 2021』によれば、人事部員に対して「SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを行っているか」という質問をしたところ、「行っている」という回答が最も多かった(33・0%)。「今後行う予定」という回答(26・5%)を合わせると、取り組みに対して前向きな対応を示す回答が過半数に達する結果であった。(図の拡大はこちら)
企業規模別の集計を見ると、5000人以上の規模の企業では「行っている」が、すでに80%を超えた。今後は、中小・中堅企業でも広く浸透していくか注目したい。
SDGsに対応する取り組みが象徴しているのは、組織のマネジメントそのものの変化である。株主価値の最大化だけに傾倒してきたマネジメントのあり方を反省し、従業員や地域社会といった、多様な利害関係者を考慮に入れたマネジメントへかじを切ろうとしている企業が多いと考えることができる。
先の調査で「SDGsへの取り組みを行っている」と回答した人に、「人事として」取り組んでいる内容を質問したところ、最も多い回答は「女性活躍推進」(74・7%)で、障がい者雇用(63・2%)、時間外労働の短縮(62・1%)が続いた。多様性推進や柔軟な働き方の推進は、SDGsへの取り組みという観点からも重要視されていることがわかる。
能力生かす働き方
多様な利害関係者を想定した上で従業員のマネジメントを行う考え方は、決して新しいものではない。むしろ経営学の中でも、ヒトのマネジメントを専門的に研究する人的資源管理論が、その発展の中で見失ってきた視点を取り戻そうとする原点回帰ともいえる。
米ハーバード大学のビアー教授らは、米国における人的資源管理論の勃興期である1984年に、従業員や地域社会などの多様な利害関係者の利害に注目した人的資源管理のモデル、いわゆる「ハーバードモデル」を提唱している(図の利害関係者の利害を参照)。
ビアー教授らは2015年にも、「ハーバードモデル」に立ち戻って現在のヒトのマネジメントを考…
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週刊エコノミスト
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