J-REIT創設20年「金利なき時代の救世主」か=高田創
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上場20年目の課題 J─REITは分配金収入で存在感も50兆円市場へ物件・税制の見直し急務=高田創
J─REIT(ジェイリート)が初上場した2001年9月10日の翌日。米国での「セプテンバー11」、「世界同時多発テロ」が起きた。当時、襲撃された米国ビルもREITに組み込まれていたこともあり、REIT市場はグローバルに大混乱となり、そのあおりを受け、J─REITも暴落のスタートとなった。
だが、その後、順調な回復が続き、ミニバブル期には過熱になるまでの状況に達したが、リーマン・ショックで再び暴落が生じた。ミニバブル崩壊以降、市場サポートや安倍晋三政権のアベノミクスに伴う異次元緩和を背景として回復が続いた。20年のコロナショックで3度目の大きな下落が生じたものの、回復に向かい現在に至っている(図1)。
J─REITの市場規模は大幅に拡大した。今日、時価総額は18兆円近くに達し、私募REITを含めて22兆円程度の規模となり、社債市場のおよそ半分の規模になっている(図2)。20年代には50兆円規模を展望し、投資家にとって不可欠なアセットクラスになるだろう。
投資資金の受け皿に
日本は1990年代初めのバブル崩壊で不動産市場を中心に1000兆円以上の資産価格の喪失が生じた。金融・政策面から締め付けが繰り返された。不動産と株式は「悪の枢軸」でトラウマそのものであり、新たな投資資金を呼び込むのは困難になっていた。
J─REIT創設が2000年に決まり、当初は不動産市場の流動化手段としての性格が強かった。深刻な不動産デフレによるバランスシート問題として、企業の資本が毀損(きそん)したなか、その財務上の負担を企業本体から切り離し、新たなリスクテークができるようにするものだ。
一方、ミニバブル崩壊後、資産市場に優しい潮流が政策的にも続いた。さらに、その後、12年以降の安倍晋三政権のアベノミクス、日本銀行黒田東彦総裁の金融緩和に伴い一層サポートが続いた。金融面からの安定と同時にREITを実質管理するスポンサー企業との安定的関係も再び重視された。
今日、コロナショック下、テナントは大きな打撃をうけたが、金融面でのサポートが大きく過去の危機と異なる。コロナショックは株・不動産に対しかつてなく優しく、保有物件の売却を急ぐ状況にない。政府が20年にコロナ対策として実施した家賃支援給付金は、事実上の不動産市場への公的資金注入に等しく、割引現在価値(ディスカウントキャッシュフロー)で不動産評価を行う際に、賃料の負担力が増すことは価格保全に資する。
また、日銀は不動産市場を支援すべくREIT買い取りを続け、今回、コロナショックという大きなストレスからもいち早く立ち直ったのは資産価格の支援状況への信任が続いたからと考えられる。
そもそもJ─REITも含めた不動産証券化商品は1500兆円を超える日本の不動産市場の中のえりすぐりである。J─REIT市場の機能は新たな「聖域」を作り、そこに投資資金を受け入れる器作りをすることだった。同時に、国内・海外資金を不動産市場に向ける新たな金融商品を作ることもJ─REITの目的とされた。
J─REITの過去20年の予想分配金利回りの推移をみると、長期金利(10年国債利回り)や東証1部株式配当利回りと比較し高い水準にある(図3)。ここで、「J─REIT予想分配金利回り」−「10年国債利回り」をスプレッドとすると、スプレッド水準は引き続き3%を超え、J─REITはインカム商品として低金利の中での「インカムゲイン」、すなわち投資家への分配金収入上の優位性が注目されている。
特に、運用難となった地域金融機関を中心に関心を集めたのはこのインカム確保による面が大きい。ミニバブル期には国債利回りとの乖離(かいり)が1%以下になる過熱となったが、現在は依然、3%以上のスプレッドが続き、安定運用のニーズに合致する。
「バブル」ではない
従来「債券=インカム」「株式=キャピタル」が金融での常識であった。しかし、現在、マイナス金利政策で金利がなくなる異例な状態で債券のインカム喪失に遭っている。その代替的商品を求める潮流のなか、REITに対し新たなインカム商品との位置付けがより強まると考えられる。
REITも含め不動産価格上昇に対し常に「バブル」との見方が根強い。しかし、以上のイールドスプレッドの観点からみて、ミニバブル期と比べてもバブルとはいいにくい。コロナショックでも不動産価格が下がらなかった(逆に上昇した)のは、金利がなくなった世界の必然でもある。また、海外と比べた日本の不動産市場の割安さが、海外投資家から評価されている面も大きい。
日本のREIT市場は新たな局面を迎えている。20年が経過する中、物件のリニューアルも必要な局面にある。同時に、物件の入れ…
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週刊エコノミスト
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