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国際・政治エコノミストリポート

「マイバッグ」「ペットボトル再生」では不十分 「脱プラ」をブームで終わらせないために必要な視点とは=瀬口亮子

レジ袋は必要な人が「申し出る」制度になった
レジ袋は必要な人が「申し出る」制度になった

「脱プラ」の行方 定着したレジ袋の辞退 次の標的はペット容器減=瀬口亮子

 2020年7月1日にレジ袋有料化(無償配布禁止)が施行されてから、1年以上が経過した。「有料のレジ袋はご入り用ですか」「大丈夫です」。買い物の際の店員と客のこんなやり取りも、すっかり耳慣れたものになった。

 コンビニ各社などが加盟する日本フランチャイズチェーン協会によると、有料化前の20年6月時点のレジ袋辞退率は28・3%に過ぎなかったが、21年2月には74・6%まで上昇。もともと取り組みの進んでいたスーパー各社が加盟する日本チェーンストア協会では、19年度時点ですでに57・2%だったのが、20年度は75・3%に達したという。

繰り返し使ってこそエコ

 有料化される前は、レジ袋をもらいたくない人がわざわざ「袋は要りません」と申し出たり、不要カードをカゴに入れたりしなければならなかった。特にコンビニでは、袋に入れようとしている店員の手を止めてまで「不要」の意思を伝えるのは、おっくうだと感じていた人も多いだろう。有料化は、ただ単に袋の代金を払わなければならなくなったというだけでなく、「必要な人が『ほしい』と申し出る」制度に変わった。この「デフォルト」(標準設定)の変更こそが、人々の行動変化を促す効果につながったといえる。

 今回のレジ袋有料化については、当初関係者から「抜け穴」が指摘されていた。有料化が義務付けられるのは、プラスチック製で厚さ50マイクロメートル未満の持ち帰り用の袋とされており、厚さ50マイクロメートル以上のプラスチック袋や、海洋生分解性プラスチックの袋、植物由来のバイオプラスチックを25%以上含む袋は、対象外とされていたからである。これら対象外の袋や紙袋を無償配布して、有料化を免れる事業者がかなり出てくるのではないか、と懸念されていたのである。

 しかし、ふたを開けてみると、多くの小売りが、プラスチック袋をバイオプラ袋に切り替えた上で有料化したり、紙袋も合わせて有料化したりした。当初は紙袋を無償配布していたユニクロも20年9月からは一律10円の有料制とした。これは期待した以上の展開だった。確かに、紙袋やバイオプラ袋は従来のプラスチック袋に比べ、原価が高く、無償配布は割に合わないため、各社の判断は合理的といえる。

マイバッグは繰り返し使って初めて「エコ」になる
マイバッグは繰り返し使って初めて「エコ」になる

 一方で、注意点もある。多くの小売店が、店頭にコットン製やポリエステル製などの繰り返し使える買い物用袋を並べた「エコバッグ」コーナーを展開している。買い物の量や用途に合わせて袋を複数枚用意することは必要だろうが、デザインなどにつられてつい何枚も購入するのでは意味がない。

 そもそも「マイバッグって本当にエコなの?」という疑問もよく聞かれる。資源採取から製造、物流、使用、廃棄・リサイクルまでの製品のライフサイクル全体の環境負荷を考えるLCA(ライフサイクルアセスメント)について、東京大学大学院講師の中谷隼氏(都市工学専攻)らの研究結果(図1)によると、同じ中国製のレジ袋とポリエステル製のマイバッグの二酸化炭素(CO2)排出量を比較した場合、マイバッグはレジ袋の50倍の排出量となる。マイバッグの重量がレジ袋の約10倍であり、原料段階のポリエステル生地製造過程における負荷が大きいことが主要因である。マイバッグは50回以上使用して初めてレジ袋のCO2排出量を下回り、以降繰り返し使うことで、排出量を低減することができる。また、イギリス環境庁の調査(06年)では、コットン製バッグでは130回以上使用しないと、レジ袋よりも環境負荷が高くなるとされている。

 企業や自治体が、国連の持続可能な開発目標「SDGs」の取り組みと称して、顧客や市民にロゴ入りバッグを配布しているのを目にするが、もらった人がそれだけの回数使ってくれるのか、今一度考えてからにするべきだろう。

東京の水道水効果

 レジ袋が、使い捨てプラスチック削減の最初のターゲットになった背景は、レジ袋が商品の購入に対してサービスとしてついてくる「おまけ」にすぎず、課金するのが合理的であること、1990年代ごろから、資源節約や地球温暖化防止の取り組みとしてマイバッグ持参運動が広がっていたことなどがある。日本はもともと早くから官民挙げてレジ袋削減の取り組みを進めてきたにもかかわらず、法制化の段階では他国に後れを取ってしまい、ようやく追いついた形だ。今や、世界はすでに次のターゲットに向かっている。

 いま注目されているのはペットボトルだ。世界では1分間に100万本のペットボトルが生産されているといわれる(17年、ユーロモニター調べ)。ペットボトルリサイクル推進協議会の統計によれば、19年のペットボトルのリサイクル率は、日本では85・8%、欧州は39・6%、アメリカは19・7%である。リサイクルされていないペットボトルがどこに行くのかというと、リサイクルシステムが整っていない国や地域ではその多くが埋め立て処分され、適切に排出されなかったボトルの一部は山、川、海など自然界に流出している。不法投棄を防止して正しいリサイクルルートに乗せる対策は必要だが、問題は、リサイクルだけすれば解決といえるのかどうかだ。

 そこで、ペットボトルという容器だけでなく、「ペットボトルに入った飲み物を飲むライフスタイル」の環境負荷に着目し、「外出先で水を飲む」場合の4パターンを比較したのが図2である。ペットボトル飲料は、石油資源を使ったボトルの製造だけでなく、飲料の輸送や販売段階の冷蔵、そして飲んだ後のボトルのリサイクルといった商品の一生で多くのエネルギーを消費し、CO2を排出している。これに対し、水道水を冷水機や水筒で飲むパターンでは、排出量がはるかに小さくなる。なお、水筒のステンレスの製造には多くのエネルギーが使われるが、ここでは、水筒を100回使用すると想定している。マイボトルもペットボトル飲料の環境負荷を下回るだけの回数使わなければエコではないのは、マイバッグと同様だ。

 また最近、脱プラスチックの取り組みとして、企業や自治体の「自販機からペットボトルをなくして缶飲料に代えた」、といった事例を聞くが、これは環境負荷の低減になっているのだろうか。ペットボトルだけを排除することより、飲料自販機自体を削減したり、水道水をくめる場所を増やしたりする方が、環境負荷の低減には効果的だ。

 東京オリンピックで外国人選手が「東京の水道水は安全でおいしい!」とSNSで発信して大きな話題になったように、日本の水道水は高く評価されている。東京都水道局は18年、有楽町駅前の東京国際フォーラム中庭に「東京水」のおいしさをアピールするマイボトル用の給水機を設置した。その利用状況はスマートメーターで管理され、データも公開されている。19年度は年間2万4578リットルが利用された。500ミリリットル入りペットボトルに換算すると4万9156本分だ。最も利用の多い8月は7760本分で、1日当たり250本だった。

 また、神奈川県企業庁は、東京オリンピックのセーリング会場となった江の島にセーリング競技期間中、3台の給水機を設置。4416人が利用、多い日は1000人以上が利用した。

東京オリンピック中に江ノ島に設置された給水ステーション 水Do!ネットワーク提供
東京オリンピック中に江ノ島に設置された給水ステーション 水Do!ネットワーク提供

 最近、他の自治体や商業施設などでも給水機を設置してSDGsに貢献しようという取り組みが見られるようになったが、設置しただけでは環境負荷は低減しない。実際の利用状況に関する情報発信も期待したいところだ。

 今年6月の国会で「プラスチック資源循環促進法」が成立した。製品の設計から処分までのあらゆる段階でのプラスチック資源の使用を削減・合理化するための措置を講じる法律であり、その施策を定める政省令案が、8月23日に環境省と経済産業省の審議会で示された。注目されたのは、消費者に無償で提供する使い捨てプラスチック12品目(スプーン、フォーク、ストロー、歯ブラシ、ハンガー等)について、年間5トン以上使用する事業者に、削減が義務付けられることである。これらの製品はレジ袋同様、商品の購入や宿泊、クリーニングの利用に際し、無償で提供されていたものであり、辞退へのポイント付与、有料制、リユース品への変更、素材の変更等、事業者の工夫次第で削減余地は十分ある。

法制化前に各社対策

 一方、ペットボトル同様、散乱ごみのトップアイテムである使い捨てプラスチックカップや弁当容器等も削減が求められるが、こちらは各社とも既に取り組み始めている。スターバックスコーヒーは今年4月から順次、アイスドリンク用のプラスチックカップを、FSC(森林管理協議会)認証の紙コップに変更している。ローソンも昨年11月からアイスコーヒーのカップを紙コップに切り替えた。そして9月14日からは、ふたつき容器を持参しておでんを購入すると割引になる新たなサービスも開始した。早速、容器を持参して注文してみたところ、店員は快くその容器に入れてくれた上、39円引きになった。

 また、量り売りも注目されている。欧米のエコスーパー等でおなじみの量り売り用のおしゃれなケースを設置する店舗も増えてきた。ただし、注意も必要だ。自宅からの容器持参に対応している店もあるが、新たに専用容器の購入が求められる店もある。また、海外から輸入される液体洗剤等は、輸送に環境負荷がかっている上に、洗剤の入ったタンクは「ワンウエー」である。自分の手元にごみが出なくても、廃棄物は発生している。無包装ゆえに早く傷む食品の場合、かえって食品ロスが増えることもある。

「環境負荷にはさまざまな側面があり、何を優先して商品や行動を決めるかは、専門家でも迷うことはある」と語るのは国立環境研究所資源循環領域の田崎智宏氏だ。消費者の選択の参考になる比較データ等の情報発信とそのための調査研究が求められる。

(瀬口亮子・環境カウンセラー)

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