中国の地方政府がインフラ投資のための「専項債」発行を加速している理由は=神宮健
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加速する地方の「専項債」発行 インフラ建設で経済下支え=神宮健
地方政府の「専項債」発行が加速している。地方政府専項債は、地方政府がインフラプロジェクト等の資金調達のために発行するもので、償還財源は原則プロジェクト等の収益である。このため、地方財政の一般会計とは別会計の政府性基金会計(特別会計に相当)で管理される。
今年前半の専項債の発行はスローペースであった。発行額(新規調達分)は1兆元強(約17兆円)と年間の発行限度額3・47兆元の約3割に過ぎなかった。年後半に入り発行ペースは加速し、1~8月では5割強に上昇しているが、地方政府の隠れ債務増加の取り締まりもあって、インフラ投資の伸びは、1~8月で前年同期比2・9%にとどまっている。
今年前半の発行額が少なかった背景には、年前半の景気が比較的堅調で、景気安定化策を打つ必要が小さかったことがある。加えて、専項債の管理の問題もある。
一部の地方政府では、昨年までに専項債で調達した資金が利用されず遊休資金となっている。また、専項債資金を利用したプロジェクトの採算見通しが楽観的であることや償還財源を地方政府の土地(使用権)譲渡収入に実際は依存している、といった従来から指摘される課題もある。
このため、今年、中国政府は専項債管理強化のルールを発表した。一つは、専項債資金を使ったプロジェクトに対する貫徹式モニタリングである。具体的には、プロジェクトの準備、建設、運営、収入と国庫への上納の状況を一貫してリアルタイムで監視する。もう一つが、専項債資金利用の効果のチェックである。プロジェクト予算執行の進捗(しんちょく)状況や当初設定目標の達成状…
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週刊エコノミスト
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