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ドイツ総選挙で躍進した「緑の党」が連立協議入り 大胆な環境政策はどこまで進むのか=菅野泰夫

    3党連立を目指す社会民主党(SPD)のショルツ氏(右から2番目)ら3党の党首 Bloomberg
    3党連立を目指す社会民主党(SPD)のショルツ氏(右から2番目)ら3党の党首 Bloomberg

    ドイツ総選挙で躍進した「緑の党」が連立協議入り 大胆な環境政策はどこまで進むのか=菅野泰夫

     9月26日に行われたドイツ連邦議会選挙(総選挙)は事前に予想されていたとはいえ、得票率が3分の1を超えた政党がない前代未聞の結果となった。

     4期16年にわたって首相を務めたメルケル氏(10月26日に任期を終え、新政権が成立するまで首相代行)の次期首相を選ぶ意味合いが強かった選挙だったが、中道左派の社会民主党(SPD)が25・7%を獲得し、第1党の座を手にした。

     2013年からSPDと大連立を組むメルケル氏所属のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は24・1%と最悪の結果となり、第2党に転落した。緑の党は前回から大きく得票率(14・8%)を伸ばし、第3党に躍り出た。しかし、選挙戦序盤で一時的に支持率トップに立ったことで同党の期待値は高く、目標の18%以上に届かなかった点には落胆の声もあった。リベラル政党の自由民主党(FDP)が11・5%、反移民を掲げるドイツのための選択肢(AfD)が10・3%で続いた。

     SPDの得票率は過去最低となった前回(20・5%)から復活したが、1998年選挙で第1党となった際(40・9%)に比べれば見る影もない。それでも、SPDの首相候補であるショルツ財務相は「国民の信託を得た」と発言している。ただ、ドイツでは第一党が必ずしも政権与党になるとは限らず、76年の選挙では、コール党首率いるCDU/CSUが48・6%の得票率で第一党になりながらも、シュミット首相が率いるSPDとFDPとの連立政権(合計得票率が過半数)が誕生している。

    「信号」色の組み合わせ

     本稿を執筆している10月29日の時点では、政党間で連立協議が続いており、実現可能性が高いとされる政党の組み合わせは、各党のイメージカラーから①信号連立(SPD、緑の党、FDP=各党のシンボルカラーがそれぞれ赤、緑、黄)、②ジャマイカ連立(CDU/CSU、緑の党、FDP=同じく黒、緑、黄でジャマイカ国旗と同じ配色)――の二つとされる。

     ただ、総選挙から1カ月も立たない10月15日にSPD、緑の党およびFDPは、正式な連立協議前のいわゆる「予備的協議」を成功裏に終わらせている。

     そのため、「信号連立」の組み合わせを軸に連立協議が進む可能性が高い。SPDは「クリスマスまでの新政権誕生」を目標に掲げており、前回選挙時の連立協議よりもペースが早いため、目標は実現可能な域に達したと言える。

     3党の予備的協議では、12㌻からなる政策合意文書をまとめており、これが連立協議のたたき台となる。3党は政策面で大きく異なり、今回の政策合意文書の拘束力は弱い。ただ、ドイツでは連立協議の段階でほぼ政策が固められ、それが議会会期中に覆ることは少ないため、たたき台とはいえ連立の際に結ぶ「連立契約書」とは大枠は変わらないと見られている。

     最も注目されたのは、財政問題である。新型コロナウイルスの感染拡大以降、ドイツ政府は大幅な借り入れを余儀なくされ、20年に財政赤字に陥っている。公的債務縮小を目指すドイツでは、構造的財政赤字を対国内総生産(GDP)比で0・35%に抑える財政ルール(債務ブレーキ)を憲法で制定し09年に導入したものの、(コロナ危機を受け)現在一時適用停止となっている。

     EUもドイツ同様、財政ルール(公的債務の対GDP比を60%未満、財政赤字の対GDP比を3%未満)の適用を一時停止し、23年に再開を予定している。財務相であるSPDのショルツ氏自身は、財政運営の方向性でタカ派の見解を示すなど、SPD本体ほど歳出拡大を声高に提唱していない。また、企業寄りのFDPは、超拡張的な財政政策を続けることは欧州にとって大きなリスクを内包するとみている。

     一方、債務ブレーキの緩和(廃止の方向性)を唯一公約としている緑の党が、連立参加にどのような条件を付けるかも焦点だった。政策合意文書では、20年代を「将来に向けた投資の10年にする」という目標を掲げ、SPD、緑の党が掲げる官民双方での大幅な投資拡大という積極財政の方向性が示された。ただし債務ブレーキの枠組みを保持したままでという条件が付けられたことで、FDPの主張がある程度通った形となった。

    エンジン車は生き残り?

     前回から得票率を7割近く増やした緑の党の発言力…

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