米ナイキ向けなどで世界を席巻する台湾アパレル受託生産の巨人「儒鴻企業」のスゴさ=富岡浩司
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儒鴻企業 アパレル受託生産の巨人=富岡浩司/5
◆Eclat Textile
台湾の儒鴻企業(エクラット・テキスタイル)は、世界でも有数のアパレル受託生産企業である。世界的な有名ブランドなどの顧客向けに生産するOEM(相手先ブランドによる生産)や、顧客のブランドで設計から製造まで請け負うODM(相手先デザイン生産)だけを行う。台湾企業にはこうした自社ブランドを持たない隠れた巨人企業が多い。
有名なのは米アップル社の携帯電話iPhone(アイフォーン)を生産する鴻海精密工業だ。このほかにもスポーツシューズを生産する豊泰企業や宝成工業、自転車を開発・生産する美利達工業(Merida Industry)などがあり、同社はそのアパレル版といえる。台湾企業の強みは縁の下の力持ち企業が多い点にある。米中対立や中台関係悪化など世界のビジネス環境が急変しても、消費者の目に直接触れないため不買運動や排斥の対象になりにくい。
高機能製品に専念
儒鴻は1977年に現在のオーナー兼董事長(会長)である洪鎮海氏が設立し、2001年に台湾証券取引所に上場。順調に成長を続け、株価は上場時に公募価格7台湾ドルだったのが、今年7月には一時660台湾ドル台まで上昇した。高い技術開発への評価が背景にあるとみられる。
特徴は生産製品を機能性の高いスポーツウエアに専念していることだ。売上高全体の約7割を占める衣服製造部門の顧客には、米アンダーアーマーや米ナイキ、カナダのルルレモンなどの有名スポーツ・ブランドが名を連ねる。高品質を求める顧客の嗜好(しこう)に合わせて、環境に優しい素材を使用する製品などを開発している。
また、特筆すべきは、ハイエンド製品を製造するために、布や繊維の開発を手掛ける垂直一体型ビジネスを展開していることだ。売上高全体の3割を占めるこの部門では、湿度コントロールや抗ウイルスなどの機能性用途向けの…
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週刊エコノミスト
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