「シニア起業」の成功確率は「経験」が高める=加藤木綿美
有料記事
日本に有益な「シニア起業」=加藤木綿美
すでに超高齢社会に突入した日本。今後の経済活性化のカギを握っているのは、シニア層の労働力をどう生かすかである。今年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会を確保することが企業の努力義務として定められている。70歳まで働く時代、さらにいえば70歳を超えても働く時代が近づいている。
多くの会社員が定年を迎えた際、一般的に選択するのは再雇用制度による再雇用契約の締結だろう。厚生年金の受給開始時期は、2013年度より60歳から65歳へ段階的な引き上げが始まったが、60歳から65歳の5年間、無給期間が発生してしまう。そこで同年、高年齢者雇用安定法を改正し、一度退職した後に再び同じ企業(子会社・グループ会社などの可能性も含まれる)で雇用される再雇用制度が開始された。
具体的には、政府は企業に対し、(1)65歳までの定年の引き上げ、(2)65歳までの継続雇用制度の導入、(3)定年の廃止──のいずれかの実施を義務付けた。結果として、多くの企業が(2)を選んでいる。
今年、さらに改正高年齢者雇用安定法の施行も決まり、本人が希望すれば全員が70歳まで同じ企業で働き続けることができるようになった。ただし、65~70歳の就業についてはあくまで企業側に「努力義務」を求めるものであり、法的拘束力や罰則などは適用されない。
再雇用は「同じ仕事」で
再雇用制度により、定年後もそれまでと同じ会社で働くことを選択した場合、社内での役割は大きく二つある。現役時代(定年前)と同様の仕事を継続するパターンと、これまでの知見を生かして新しい仕事を行うパターンである。
前者の場合、例えば営業担当者であれば、昔なじみの顧客を抱えていたり、年代が近いからこそコミュニケーションが取りやすい顧客がいたりする、いわば人脈のあるシニアは、定年後も社内で重宝される。ある製薬会社の事例では、高齢の病院の院長に営業する際などは、若手社員が行くよりも昔なじみの同年代の営業担当者のほうが高い売り上げが見込めるという。
一方、後者の場合の代表例は、社内研修やコーチングの講師を務めることだ。ただ、筆者が複数社に対して行った調査によれば、意外にもこうした役割を担うシニアは少なかった。集団トレーニングの場合、そもそも講師は数人で済むことが多いため、携われる人数が少ないということが…
残り1561文字(全文2561文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める