米イーライリリーの売上高は過去最高。幅広い医薬品に加えてコロナ治療薬も貢献=小田切尚登
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イーライリリー コロナ治療薬で過去最高の売上高=小田切尚登/10
◆Eli Lilly
イーライリリーは世界的な米国医薬品メーカーである。1876年に南北戦争の退役軍人で製薬化学者だったイーライ・リリー大佐が創業した。同社は長い歴史の中で世界で最初に製造・大量販売した薬は多く、代表的なものにはポリオ・ワクチンやペニシリン、インスリンなどがある。また、錠剤をカプセルに入れたり、甘味やフルーツのフレーバーを付けて飲みやすくしたのも同社が最初である。
世界の大手医薬品メーカーの中でも研究開発を重視している企業として知られており、2020年には売上高の約25%に当たる60億ドルを研究開発費に充てている。世界の大手医薬品メーカーでは研究開発費に投資する割合が10%台なのが一般的である中で、同社の研究重視の姿勢が光る。
糖尿病治療薬が主力
業務の柱となっているのは糖尿病、腫瘍学、免疫学、神経科学の分野である。糖尿病関係は20年の同社売上高で48%と全体の半分近くを占めている。もともとイーライリリーはインスリンを世界で最初に実用化した会社であり、伝統的に糖尿病に強みを持っている。
トルリシティ(2型糖尿病の治療薬)はここ数年来同社最大の売上高を誇っており、全社の21%を占めている。それに次ぐのがインスリンリスプロ製剤であるヒューマログ(売上高の11%)、ヒューマリン(インスリンヒト「遺伝子組み換え」注射液)(同5%)、ジャディアンス(尿中の糖排せつを増加させて血糖値を低下させる薬)(同5%)である。
がんを含む腫瘍学は売上高の21・7%を占める。中でも葉酸阻害型抗がん剤のアリムタ(売上高の9・5%)が最大だ。これは日本国内では悪性中皮腫に適応する。免疫関係では乾癬(かんせん)治療薬のトルツ(イキセキズマブ「遺伝子組み換え」キット)が売上高の7・3%を占める。トルツは皮膚症状や関節炎などを改…
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週刊エコノミスト
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