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週刊エコノミスト Online 闘論席

ヒトよりイヌのほうが臭いに敏感というのは誤りだ=池谷裕二

撮影 中村琢磨
撮影 中村琢磨

池谷裕二の闘論席

 嗅覚の鋭い動物といえば、イヌを思い浮かべる方が多いだろう。警察犬や麻薬探知犬として活躍している。一説にはヒトの1億倍ともいわれる嗅覚を誇る。

 しかし脳の研究を続けている私には不思議でならない。イヌもヒトも鼻の上皮細胞にある嗅覚センサーは同じタイプのものだ。なぜイヌは1億倍もの濃度の分子を感知できるのだろうか。

 イヌの嗅覚の鋭さは、フランスの解剖学者ブローカが1879年に著した記述が無批判に伝承された都市伝説とされる。2017年、米ラトガース大学のマクガン博士はイヌの嗅覚について再検証した。その結果は予想通り。ヒトとイヌはにおいの感度は同程度だった。嗅ぎ分けの得手なにおいの種類に若干の差はあるが、イヌのほうが敏感だとするのは誤りだ。

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