教養・歴史書評

身心を壊すアイドル続出! 芸能界の環境改善に向け問題提起=荻上チキ

身心を壊すアイドル続出! 現場から幅広い問題提起=荻上チキ

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『アイドル保健体育』(竹中夏海著、シーディージャーナル、1650円)が、とてもいい本だった。アイドル志望者や関係者らへの教科書であり、保健体育の目線からみたアイドル文化論、性規範の系譜学であり、ユニークなメディア論でもあった。

 本書では、月経や摂食障害など、アイドル労働の現場での対応が不足しがちな啓発テーマを取り上げている。著者の竹中氏は振付師の仕事をしており、現場でアイドルと関わっているだけでなく、アイドル文化へのリスペクトも惜しみない。そのうえで、アイドル文化の持続性を問い直すために、あるいはアイドル文化が「負の教材」にならないために、幅広い問題提起を行っている。

 現代のアイドルは、かつての時代以上に、健康に気遣う必要が高まっていることを、本書は説得力を持って提示する。例えば現在では、ダンスや振り付けでの運動量が増加しているほか、リリースイベントやライブ活動も過密になっている。一方で、「成長過程」を推してもらうことこそアイドルであるという価値観も合わさり、体力づくりやダンスなどの基礎トレーニングがなされないままデビューすることも多い。

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