身心を壊すアイドル続出! 芸能界の環境改善に向け問題提起=荻上チキ
有料記事
身心を壊すアイドル続出! 現場から幅広い問題提起=荻上チキ
×月×日
『アイドル保健体育』(竹中夏海著、シーディージャーナル、1650円)が、とてもいい本だった。アイドル志望者や関係者らへの教科書であり、保健体育の目線からみたアイドル文化論、性規範の系譜学であり、ユニークなメディア論でもあった。
本書では、月経や摂食障害など、アイドル労働の現場での対応が不足しがちな啓発テーマを取り上げている。著者の竹中氏は振付師の仕事をしており、現場でアイドルと関わっているだけでなく、アイドル文化へのリスペクトも惜しみない。そのうえで、アイドル文化の持続性を問い直すために、あるいはアイドル文化が「負の教材」にならないために、幅広い問題提起を行っている。
現代のアイドルは、かつての時代以上に、健康に気遣う必要が高まっていることを、本書は説得力を持って提示する。例えば現在では、ダンスや振り付けでの運動量が増加しているほか、リリースイベントやライブ活動も過密になっている。一方で、「成長過程」を推してもらうことこそアイドルであるという価値観も合わさり、体力づくりやダンスなどの基礎トレーニングがなされないままデビューすることも多い。
残り886文字(全文1395文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める