戦争の場は受験から就活へ 学生に広がる就職のための「塾通い」=加藤木綿美
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就活生に広がる「塾通い」=加藤木綿美
受験と就活の難易度が逆転
2016年の大手食品メーカー・株式会社明治の事務系総合職は応募者約1万1000人に対して内定者は4人。倍率は2750倍にのぼる。なぜこれほどまでに大卒の就活は高倍率になってしまったのだろうか。
大きな理由は就活の自由競争化である。05年ごろからリクナビやマイナビの全盛期になり、自由応募が基本となった。これによって誰でも、どんな企業にでも、応募できるようになった。学歴に関係なく希望の企業に自由に応募できるこの方式は“平等で公平だ”と学生からも歓迎された。
結果、各業界のトップ企業や、人気企業ランキングで上位に入る企業にばかり応募が殺到する現象が起きている。
大学受験においては、本番となる試験を受ける前に模試を何回も受けるのが一般的であり、模試でD判定やE判定を連発している大学には願書を出さない高校生が多い。
出願も無料ではないし、合格可能性の低い大学にやみくもに出願しても仕方がないからである。しかし、就活では受験でいうところの模試のようなものはない。そのため、自分の実力や内定の可能性が見えにくく、人気企業にやみくもにエントリーする学生が後を絶たないのである。
現代の大学生の世代は大学進学率が上昇し、大学の数も、1985年には460校だったのが、17年には780校に増加した。
一般受験の他に推薦入試やAO入試など入試の形式も増えて、試験が苦手でも小論文や面接での自己アピールによって入学することも可能になり、受験にあたっての選択肢も多様化している。
現役の業界人が塾講師
一方、大学生の就活難易度の上昇は、コロナ以前からすでに見られていた。高度経済成長期ごろから普及した「受験戦争」という言葉は、いまや「就活戦争」に取って代わるのではないかという状況になっている。今の学生の親であるバブル世代に見られた「受験は難しい、就活は容易」の真逆、すなわち、「受験は容易、就活は難しい」時代になり、受験と就活の難易度の逆転現象が起きている。
加えて、学生を直撃しているのが、コロナ禍就活である。採用数を減らす企業が増えていることに加え、ワクチンの普及が進んでいるものの、オンライン説明会、自己PR動画の提出、オンライン面接など、依然として採用活動での非対面化は継続されており、コロナ禍での就職活動に翻弄(ほんろう)される学生は少なくない…
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週刊エコノミスト
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