米国で高まる1ドル・ショップ人気。創業初の値上げで注目されるダラー・ツリー=岩田太郎
有料記事
ダラー・ツリー 値上げで「1ドル」に決別=岩田太郎/14
◆Dollar Tree
米ダラー・ツリーは、食品や日用雑貨を扱うディスカウントストアの大手チェーンだ。企業名の通り、ほとんどの商品が1ドル(約113円)に統一された値付けで知られる「1ドル・ショップ」で、日本の100円ショップの米国版だ。コロナ禍の米国において物価上昇が高止まりする中、投資家から注目される「インフレ銘柄」だ。安い商品の提供で消費者の支持を集めるだけでなく、仕入れ価格や経費の高騰分を販売価格に転嫁することで収益性の改善を実現している。
創業は1986年。1ドル・ショップで米国シェア1位のダラー・ゼネラルの競合企業であり、同業大手のファミリー・ダラーを2015年に買収して規模を拡大した。21年1月現在の店舗数は全米1万5685店舗で、「ダラー・ツリー」と「ファミリー・ダラー」のブランドそれぞれがおよそ半々となっている。売り場面積の広さでは、ダラー・ゼネラルと比べて遜色がない。
だが、ダラー・ツリーは買収後も、ダラー・ゼネラルに売上高や純利益、キャッシュフローにおいて、後塵(こうじん)を拝してきた。これは、ダラー・ゼネラルの品ぞろえがより高価な有名ブランドのものを含み、値付けも10ドル近辺までと幅広く、売り場面積当たりの収益率が高かったこと、さらに買収したファミリー・ダラーの立て直しに経営資源を割く必要があったためだ。
新規出店を加速
ダラー・ツリーの業績拡大の契機となったのが、新型コロナウイルス禍が引き起こした供給網や労働市場の混乱で高まる物価上昇だ。米消費者が生活防衛のための節約志向を強め、1ドル・ショップが脚光を浴びている。
ダラー・ツリーは21年11月、創業来35年間続けた「1ドル路線」と決別し、商品の基本価格を1・25ドルへ値上げするとともに、3~5ドル価格帯の品ぞろえを拡充する値付けの多様化を発…
残り1464文字(全文2264文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める