週刊エコノミスト Online闘論席

時代遅れになった事実を尊重する態度=池谷裕二

撮影 猪飼健史
撮影 猪飼健史

池谷裕二の闘論席

 人は感情で動く。私は科学に従事する者として真実を重んじたいが、実社会では科学的真実は社会的真実にしばしば勝てない。科学的に正しくても、世間が生理的に受けつけなければ、社会からは拒絶される。データや事実よりも「感覚的にどう思うか」が重要なのだ。ワクチンが怖いと思えば、頭では有効性を理解していても、接種をためらうはずだ。「理性的であれ」と思いながらも、生身の「私」は感情を無視することは難しい。

 真実よりも感情に重きを置く風潮は近年とくに強まっている。この流れは「ポスト真実」と呼ばれる。米国の作家スティーブ・テシックが導入した言葉で、彼は「事実を尊重する態度は時代遅れだ」と指摘した。

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