〝BIGBOSS〟新庄剛志監督を生かす北海道日本ハムファイターズの劇場型経営=加藤敬太
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新庄監督生かす劇場型経営の極意=加藤敬太
新球場は「美学」発揮の舞台
球春がやってきた。今シーズンのプロ野球界で注目を浴びているのは、“BIGBOSS(ビッグボス)”こと新庄剛志新監督が就任した北海道日本ハムファイターズである。
ファイターズが北海道をフランチャイズとしたのは2004年シーズンのことだ。それから18年、北の大地にしっかり根を張った地域密着球団として成長してきた。今では、北海道の欠かせない地域文化として定着している。道内のテレビや新聞では、毎日といっていいほどファイターズの話題が取り上げられ、街を歩けばファイターズの選手が載った広告やファイターズ球団のロゴマークを目にすることが多い。
筆者は、前任校が道内の大学で今年度までゼミを担当しているが、これまで7期の学部ゼミを指導する中、4人もの学生がファイターズの経営戦略を卒論研究として取り上げてきた。道内の若い世代にとってもファイターズの魅力と存在が大きい証拠だ。
ファイターズは経営学的にも魅力あふれる企業である。私は、最近の研究関心に基づき事例分析に着手した。
球団運営を革新
いよいよ来シーズンは北海道北広島市に建設中の新球場「エスコンフィールド北海道」に本拠地を移転し、周辺を「北海道ボールパークFビレッジ」として整備する予定で、地域球団経営の革新のプロセスへと突入することになる。
一昔前までプロ野球球団は、親会社の広告塔として機能することが求められ運営されていたことが多かった。採算は度外視、あくまでも球団は親会社の広告塔としての投資要素が強かった。
球団を所有してきた日本ハム(大阪市)は、ファイターズの本拠地を東京に置き、そのことも一因として全国区の食品メーカーへの成長につながった。00年代に入り、日本ハムは「ファイターズの広告塔としての役割は終えた」と判断し、北海道に移転させ地域密着球団のビジネスモデルをつくり上げてきた。
まず、ファイターズが行ったのは企業理念を「スポーツ・コミュニティの実現」とし、また活動指針を「ファンサービス・ファースト」として明文化したことである。これは、経営戦略論における「企業ドメイン=将来のあるべき戦略領域」を制定したことにほかならない。ファイターズは、北海道においてスポーツ・コミュニティを実現すべく、この理念と指針を共有できる地域ステークホルダー(ファンやスポンサー、地元企業…
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週刊エコノミスト
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