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週刊エコノミスト Online デジタル証券

物流施設のデジタル証券があっという間に完売 投資コストを下げる三井物産デジタルAM

 不動産投資が活況で、利回りは低下している。しかし、最新のテクノロジーを使えば手間を簡素化でき、コストも下がる。その分を投資家に還元することも可能だ。三井物産デジタル・アセットマネジメントは社員の半分がエンジニアの運用会社だ。上野貴司社長に戦略などを聞いた。(聞き手=宮川淳子・証券アナリスト/構成=桑子かつ代・編集部)

―― 個人向けに物流施設を裏付けにしたデジタル証券ファンドの運用を開始した。

上野 2021年12月に兵庫県神戸市の六甲アイランドの物流施設を裏付けにした、新たなデジタル証券のファンドを公募した。一口50万円から、総額で7・6億円の資金を個人投資家から調達した。購入者層は30~60代が大半で、販売は好調で数時間で完売だった。

―― デジタル証券に軸足を置いた資産運用に取り組む理由は。

上野 不動産の年間賃貸収入から得られる投資利回りは、2000年代は7~8%だったが、投資意欲の高まりで半分以下の水準に低下している。利回りが高ければ参加者が多い多層構造でも市場は成り立つが、現在の環境では「コスト負け」して投資する人のリターンが確保しずらくなる。そのため、中間コストの方を下げて、より利回りを確保できる商品のニーズがある。

 一方、海外の金融市場では投資単位を引き下げて、資金がより個人へ向かう流れがある。この2点を組み合わせると、ブロックチェーンなどを活用するデジタル証券はフィット感がある。

―― 不動産資産運用会社として全体の運用実績は。

上野 賃貸住宅や物流施設などの不動産やリース債権などへの投資も含めて、2022年2月現在で運用資産が500億円で、今後約800億円に増える見通しだ。会社設立後3年で1000億円の計画は達成出来るだろう。

六甲アイランドの物流施設をデジタル証券の対象にした
六甲アイランドの物流施設をデジタル証券の対象にした

貯めたポイントで投資

―― ファンドの販売を証券会社に委託しているが、販路拡大の考えは。

上野 2000兆円に迫ると言われる日本の個人金融資産は、その半分以上が現預金だ。こうした個人の資金にアクセスするためには、証券会社の従来の口座だけでは不十分で、当社の意義はそこにあると考えている。例えば、スマートフォン決済のPayPay(ペイペイ)やLinePay(ラインペイ)などのポイント経済圏などを通じて、ポイントで物流施設に投資できるようなことも考えている。

 不動産は見た目で分かりやすく、投資家に訴求力のある分野だ。一方、古い業界でデジタル化がほとんど進んでいない。デジタル化でのコストや手間を省くことが可能で、ダイエットの余地がある。

―― 資産運用会社だがエンジニアが多いのが特徴だ。

上野 29人の従業員のうち約半分がエンジニアだ。金融、不動産、証券が残りの半分だ。三井物産の名前がついているが、スタートアップのテクノロジー企業だ。現在は他社のブロックチェーンを利用しているが、過去に独自開発基盤の開発・実証実験もしており、必要性に応じて活用するつもりだ。

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