ブラジルのパルプ・紙大手「スザノ」の強みはユーカリにある=宮川淳子
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スザノ 脱プラで高まる紙需要/20
◆Suzano
スザノは世界シェア15%を持つブラジルのパルプ・製紙メーカー。米ニューヨーク市マンハッタン島の面積の200倍超の広大なプランテーション(大規模植林地)からパルプを生産し、パルプ生産量で世界首位、家庭紙や食品容器などの紙製品でも約40%の高い国内シェアを持つ。取引企業は世界86カ国、3万5000社に及んでいる。
同社株式は大手機関投資家が30%近くを保有し(2021年12月期)、ブラジルの石油大手ペトロブラスや総合資源開発ヴァーレとともに多くのブラジル投資ファンドに組み込まれている。ブラジルの同業フィブリア・セルロースの買収を機に19年に売上高規模が倍増したことや、プラスチック代替としての紙需要の増加が見込まれることは、スザノ株価にもポジティブな影響を与えている。
為替・金利の影響大
世界の製紙業界は企業数が多く競争が激しい。スザノはユーカリの木から採れるクラフトウッドパルプを主に、年1090万トンという世界トップの生産能力を持つことが強みである。同社のプランテーションは、ユーカリの成長に合ったブラジルの気候の恩恵を受け、収穫サイクルが短く、パルプ収量率が高い。他のほとんどのパルプ生産国の収穫サイクルが10~12年であるのに対し、スザノの場合は約7年と短い。また、比較的安価なブラジルの土地代や近代設備による効率的なエネルギー消費で、低コストな生産・物流体制を構築している。
このため、スザノの収益性は非常に高く、政情やインフレなどのブラジルの不安定な事業環境から受ける収益へのマイナス影響のバッファーとなっている。
一方、為替変動や金利費用の負担が非常に大きく、20年12月期まで2期連続の最終赤字となるなど、純損益の安定的な黒字化は容易でないため、財務運営の課題が残る。ただ、21年12月期の最終損益は86億3553万レアル(約1813億円)と前期の107億レアル(約2247億円)の純損失から一転して大幅黒字だった。
デジタル化は逆風
紙の原料は約6割が古紙、約4割がパルプで、いずれかを単独または配合することでさまざまな紙製品が生産されている。安定したパルプの供給は製紙業界にとって欠かせないもので、スザノはパルプ売上高の90%以上を輸出している。先進国の紙需要が減少に転じるなか、00年代以降の世界の紙・板紙消費量は、中国の高…
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週刊エコノミスト
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