少子化がもたらす経済への打撃は大きい。性の平等も含めて出産増加に取り組む米プロジニー=岩田太郎
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プロジニー 不妊治療や家族形成で成長/21
◆Progyny
プロジニーは大手事業者向けに従業員の不妊治療など、生殖医療関連のサービスを提供する米企業である。女性の健康上の課題を最先端テクノロジーで解決するサービスや製品である「フェムテック」銘柄の代表格だ。
米国をはじめ、世界では晩婚化や仕事キャリア追求により出産を先延ばしし、その結果妊娠の確率が低くなる女性が増えている。性的少数者(LGBTQ)の間で家族形成の動きも広がっている。プロジニーはこうした人たちや女性たちを対象に、多様な家族のあり方を支援する。2019年10月の新規株式公開から2年目の20年12月期には早くも黒字化を果たしたことで注目された。
大手優良企業が顧客
08年に創業したプロジニーの20年12月期の売上高は3億4485万ドル(約396億円)と、前年比50%の高い伸びを示した。働き手のライフスタイルの多様化が進む中で、プロジニーはさらなる収益拡大が見込まれている。21年12月期および22年12月期にもそれぞれ、前年比50%以上の売り上げ増を目指している。
急成長の理由は、これまで他企業が制度上の問題を理由に切り込まなかった分野で事業を展開していることだ。既存の生殖医療の高額さや出産成功率の低さ、医療保険制度の不適用などが問題になっていた。そうした中で、プロジニーはキャリアと子作りが両立しにくい米国の女性のジレンマに効果的な解決を提供している。
米国立衛生統計センターによれば、晩婚化などを反映し、米国のカップルの8組に1組が不妊に悩んでいる。一方、米国立衛生統計センターによれば、妊娠率が下がる比較的高齢の35歳以上の女性の出産が11年から21年の間に2・2%も増えた。このため、米大手企業の約半数は企業医療保険を通し、何らかの形の不妊治療を提供している。
こうした事情を背景に、有能な女性人材をつなぎ留めたい小売りの巨人のアマゾン、検索やクラウド大手のグーグル、多国籍消費財メーカーのユニリーバなど、収益・財務面で余裕のある大企業が社員の福利厚生としてプロジニーの体外受精・卵子凍結・胚移植などのサービスを利用している。
同社の顧客企業数と治療対象者数は、16年7~9月期の5社、11万人から21年7~9月期に265社、合計400万人まで急速に成長した。
プロジニーのサービスは、高い成功率と利用者の満足度から評…
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週刊エコノミスト
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