週刊エコノミスト Online株式市場が注目!海外企業

脱炭素の切り札のCO2回収でリードするノルウェー企業、アケル・カーボン=児玉万里子

アイスランドの脱炭素関連プラント Bloomberg
アイスランドの脱炭素関連プラント Bloomberg

アケル・カーボン・キャプチャー 排ガスからCO2回収で独自技術/22

 ◆Aker Carbon Capture

 世界で脱炭素への流れが加速する中で、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」の実現のために、CCUS(CO2の回収・有効利用・貯留)事業に注目が集まる。

 ノルウェーのアケル・カーボン・キャプチャー(アケル・カーボン)は、CCUSに特化した脱炭素事業の企業である。ノルウェーの石油ガス分野のエンジニアリング会社、アケル・ソリューションズからスピンオフ(分離独立)して、2020年7月に設立された。ソリューションズ社が、1996年以来展開していたCCUS事業のスピンオフを図った理由は、変化の激しいグローバルな脱炭素の潮流に対して迅速な経営判断を下せるようにすることだった。

 さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)に敏感な投資家や調達先から有利に資金を調達するには、本来の石油ガスビジネスから切り離した方が得策と考えたのだ。同社株式は20年に上場され、現在は同じアケル・グループのアケル・ホライゾンズ・ホールディングスが株式の42%を保有する筆頭株主である。

 アケル・カーボンが手掛けるCCUS事業は、工場や発電施設などから排出されたCO2を分離して回収し、地中深くに注入、固定化・貯留する、あるいは再利用する。同社では、そのための技術開発、実現可能性調査、建設、運営、アフターサービスなどを提供している。同社の特色は、CCUSの専業であること、排ガスからのCO2回収の独自特許技術(化学溶液)を有する、CO2回収の先進国ノルウェーにおいてCCUS事業の長い経験を有する、もともとの親会社ソリューションズ社のエンジニアリングのノウハウを活用できる、などである。

安定した売上高

 アケル・カーボンの売上高は立ち上がり始めたばかりである。18~20年に親会社の一事業部門であった段階の売上高は、ノルウェー国内のCCUS調査に関連したサービス提供などで、年間1700万クローネ(約2・2億円)~4200万クローネ(約5・5億円)にとどまっていた。しかし、スピンオフとともに売上高は急速に増加し、21年12月期は3億6300万クローネ(約47億円)に達している。

 売上高増加は、スピンオフ前から進められていた二つのプロジェクトが貢献し始めたためである…

残り1281文字(全文2281文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事