LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン 高まる富裕層の消費意欲/23=小田切尚登
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◆LVMH Moet Hennessy Louis Vuitton
仏LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)は、パリに本拠を置く高級ブランド品の世界最大の企業である。今年1月現在で、欧州で時価総額が最大の上場企業でもある。
LVMHの母体設立は1987年、仏ブランドのクリスチャン・ディオールの大株主のベルナール・アルノー氏が同業ルイ・ヴィトンに敵対的買収を仕掛けたことに端を発する。ルイ・ヴィトン側は防衛のために、シャンパンのモエ・シャンドン社とコニャックのヘネシー社という別の分野の会社と急きょ合併。しかし最終的に敵対的買収は成功した。89年にアルノー氏はヴィトン家から株式を買い取りCEO(最高経営責任者)となった。
LVMHは五つの部門からなる。ファッション・皮革製品部門が最大で、全社の売り上げの48%、利益の75%を占める。中でもハンドバッグで有名なルイ・ヴィトンの割合が飛び抜けて大きく、全社の売上高の約4分の1、利益のほぼ半分を占める。調査会社ブランジーによると、ラグジュアリー(高級服飾品)部門のブランド価値額で2021年の世界トップがルイ・ヴィトン(757億ドル、約8・7兆円)である。2位が仏シャネル、3位が仏エルメスとなっている。
LVMHに限らず多くの高級ブランドでハンドバッグが最も売れるが、それはブランドを持っていることを人々にアピールしやすい商品であるためだ。次いで靴、アクセサリー、香水が上位に並ぶ。一方で服は、ファッションショーなどを含めたコストが高いのに比べて売上高が限られる。他にはワインと蒸留酒(売上高全体の9%)、香水と化粧品(10%)、時計とジュエリー(14%)、専門小売店(DFSなど)(18%)となっている。
地域別の売上高は、米国26%、日本7%、日本以外のアジア35%、フランス6%、フランス以外の欧州15%、他の地域11%となっている。それ以上の内訳データが手に入らなかったが、近年は中国の比率が高いことは間違いない。
競合ブランド買収
アルノー氏は伝説的な経営者である。狙ったブランドを次々に買収してきた。99年には伊グッチが、10年にはエルメスが徹底抗戦し、LVMHによる買収から自らを守った。しかし、今後も買収の手を緩めることはないだろう。近年では21年1月に米ティファニーを買収している。
現在アルノー家がLVMHの47・8…
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週刊エコノミスト
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