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コロナ禍で世界の旅客需要の低迷が長期化する中、航空貨物で業績を拡大する台湾の中華航空=富岡 浩司

中華航空の飛行機 Bloomberg
中華航空の飛行機 Bloomberg

中華航空 世界有数の航空貨物/24

 ◆China Airlines

 チャイナエアライン(中華航空)は台湾を代表する航空会社である。新型コロナウイルスがまん延してから、米国のデルタや日本の日本航空(JAL)や全日空(ANA)、香港のキャセイパシフィック航空など世界の主要航空会社が業績や株価の低迷に苦しむのを尻目に、同社の株価はコロナ後はほぼ一貫して右肩上がりとなっており、2022年2月18日は上場来高値の31・95台湾ドルを付けた。コロナ禍で急落した20年3月19日の5・5台湾ドルから6倍近く上昇した。

 設立は1959年12月で、93年2月に台湾証券取引所に上場した。台湾は面積が九州ほどであること、ハイテク製品の輸出立国であるという条件から、国内線ビジネスはほとんどない。一方で、収益のほぼ全てを国際線旅客と航空貨物に頼ってきた。特に航空貨物に注力し、22年2月末時点の保有航空機は84機、うち旅客機が63機、貨物機が21機となっている。

 就航先は、ほぼ全世界をカバーしている。合計154都市の内訳は欧州13カ所、アジア83カ所、米国47カ所、オセアニア6カ所など。顧客の利便性向上に注力し、例えば日本の中部国際空港では一般貨物専用の貨物機の運航を行っている。米国と日本、台湾をつなぐ貨物便を就航させることで、自動車関連貨物の輸送に従事する。

 足元の業績と株価が良好な背景には、この航空貨物ビジネスが絶好調なことがある。同社の21年第3四半期(7~9月)の売上高が前年同期比29・5%増の344・74億台湾ドル(約1378億円)になったが、そのうち航空貨物部門が全体の9割超を占めた。

ハイテク製品の需要拡大

 半面、旅客部門の売上高は6割減だった。同社の航空貨物ビジネスは世界の航空業界の中でも存在感が大きい。20年の航空貨物取扱量では世界5位でアジアではトップ、航空貨物をどのくらいの距離で運んだかを示すトンキロ・ベースでは世界9位となっている。

 台湾で航空貨物がこれほど伸びたのは、(1)世界的な景気回復によるハイテク製品需要の急増、(2)コンテナ海運の需給逼迫(ひっぱく)による航空貨物へのシフト、(3)台湾政府の規制緩和などが理由である。新型コロナのまん延で世界的に在宅勤務や在宅学習が急速に普及する中、20年から21年にかけて台湾の得意分野である半導体や電子部品、パソコンなどの需要が急増。台湾の21年の輸出総額は前年比3割増の4464億米ドル(約52兆円)と2年連続で最高を更新した。

 加えて、台湾政府が20年春に航空貨物の規制緩和に踏み切った影響も大きい。一般の旅客機もベリー(belly=おなかの意)と呼ばれる貨物倉だけではなく、通常は旅客座席がある上部スペースにも荷物を積み込んで貨物機として運用できるようにした。危険物や化学製品でなければ、荷物棚や座席の上下スペース(背もたれ…

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