有名紅茶リプトンも売却する積極的な事業再編、株主還元にも注力の英ユニリーバ=宮川淳子
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ユニリーバ 積極的な事業再編が成長のカギ/25
◆Unilever
ユニリーバは、190カ国で400以上のブランドを有する、世界最大級の日用消費財企業。創業は1883年で、市民の清潔な暮らしを目指してせっけんの製造販売を始めたことにさかのぼる。日用消費財は低単価・非耐久性の特性から、大量かつ継続的に消費されるため、多種多様なブランドを持つユニリーバの製品群は、世界のあらゆる地域で消費者に根付いている。ホームケアのダブ(Dove)やスープのクノール(Knorr)など、年間売り上げが10億ユーロ(約1300億円)超のメガブランドは13にのぼる。
ブランドの買収や売却を通じた事業ポートフォリオの積極的な入れ替えは投資家に評価されてきた。これまで30年近く株価は上昇トレンドを維持している。さらに、2018年までの2年間には計115億ユーロ(約1・5兆円)の大規模な自社株買いと総額149億ユーロ(約1・9兆円)のさまざまな買収と売却を行い、19年9月に株価は上場来高値を更新した。海外の大手機関投資家など長期的視点に立った投資家は、ユニリーバの経営を「サステナブル(人間・社会・地球環境の持続可能な発展)」に重きを置いているとして高く評価している。
ユニリーバの経営スタイルには定評がある。革新的な企業経営で名高いポール・ポールマン前CEO(最高経営責任者)は、長期経営計画「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)」を10年に導入。気候変動、貧困、食料問題、森林破壊などのさまざまな社会問題は非常に根深い構造的な課題であるため、解決には長い時間がかかると考え、USLPを20年までの10年間に設定した。一方で、短期的な経営評価となりやすいと四半期決算を廃止し、投資家にも理解を求めた。現在も、通期と中間期のみ決算書を開示している。
環境負荷を削減
USLPでは、健やかな暮らし、環境負荷の50%削減、差別や貧困への取り組みの基本的でシンプルな三つの目標を掲げた。さらに、自社内からバリューチェーンに至るまで、具体的な数値目標の達成と報告を行っている。その結果、工場の節水や省エネ、資源や廃棄物の削減で、約10億ユーロ(約1300億円)以上のコスト減にもつながっている。ポールマン前CEOは在任中の12年、元英首相などを含む26人で構成される国連有識者ハイレベル・パネルのメンバーに選出され、「持続可能な開発目標(SDGs)」の採択にも貢献。収益成長や高い利益率を求める投資家との対話に対して、独自の経営スタイルを続けたことで、USLPの10年間でユニリーバの株価は約2・3倍に上昇した…
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週刊エコノミスト
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