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人工知能(AI)活用で融資支援、銀行と借り手に適性な金利水準を分析する米アップスタート=清水憲人

アップスタートのデイビッド・ジルアードCEO Bloomberg
アップスタートのデイビッド・ジルアードCEO Bloomberg

アップスタート 「不当なローンの拒否」に一石/26

 ◆Upstart

 アップスタートは米国のフィンテック企業である。「本当のリスクを基準にして簡単に信用調査を実現する」ことを会社のミッションにかかげ、米グーグルでクラウド事業の立ち上げに携わったデイビッド・ジルアード氏らが2012年に創業した。

 米国の金融業界ではこれまで、個人の信用度を評価する「信用スコア」の指標として、主としてFICO(ファイコ)スコアを利用してきた。これは、フェア・アイザック・コーポレーション(通称:FICO)が1980年代に開発した指標で、返済履歴や借入残高、借り入れの種類などのデータを基に個人の返済能力を数値化したものだ。

 このスコアは米国で暮らす人々にとって非常に重要な意味を持つ。ローン申請の際に影響するだけでなく、クレジットカードの作成、アパートの入居申し込み、公共サービスの契約など、日々の暮らしのさまざまな局面で参照され、契約の是非や提供条件に影響を与えるからだ。スコアが低いと、スマートフォンを利用する際も通常の契約を受け付けてもらえず、プリペイド型を使わざるを得なくなる。

 このように人々の生活に大きな影響を持つ信用スコアだが、本当に適切に算出されているといえるのだろうか。この点に疑問を投げかけたのがアップスタートの創業者たちである。

 同社のジルアードCEO(最高経営責任者)によれば、米国人の8割は返済不能に陥ったことがないにもかかわらず、信用力に問題がないことを示す「プライムスコア」を有している人は半数以下という。従来の信用スコアは精緻なものとはいえず、その結果「多くの消費者は不当にローンを拒否されたり、必要以上に高い金利を支払わされたりしてきた」と同社は指摘する。

1500超の変数解析

 FICOスコアが開発された40年前と比べると、現在では、インターネットの普及もあって、消費者の属性や行動に関する情報は入手しやすくなっている。より多くのデータを変数として用いれば、精度の高い信用スコアを作り出すことができる可能性がある。アップスタートの場合、職業や学歴などを含む1500を超える変数と実際の返済履歴データ(2160万件以上)を人工知能(AI)で解析することで、精緻なスコアを算出しているという。

 スコアの信頼性が上がれば、貸し倒れリスクを増加させることなく、より多くの借り手にローンを提供することが可能になる。従来は審査ではじかれていた人々が救済され、金融機関はビジネスを拡大させることができる。

4年間で売上高15倍

 アップスタートの中核ビジネスは、提携銀行に対し個人向け融資の審査プラット…

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