”世界で最も太陽光に恵まれた国”エジプトが再エネに本気で取り組んだ結果=谷村真
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“世界で最も太陽光に恵まれた国” エジプトが国を挙げて再エネ注力 35年に電源の4割超へ…=谷村真
エジプトが国を挙げて再エネ注力 35年に電源の4割超へ導入目標
エジプトが今秋の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の開催国として注目を集めている。エジプトは今、エネルギー源を再生可能エネルギーや脱炭素燃料に転換する「グリーントランスフォーメーション」(GX)を積極的に進めており、本稿ではそのGXの取り組みを紹介したい。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、エジプトは、平均日照時間が1日当たり9~11時間、年間の直達日射量(太陽光線に垂直な面で受けるエネルギー量)は1平方メートル当たり2000~3200キロワット時と「世界で最も太陽光資源に恵まれた国の一つ」とされている。風力の面でも、紅海沿岸が平均風速毎秒8~10メートルと、世界的に見ても風況に恵まれている。
また、国土の95%が砂漠であり、太陽光・風力発電に利用できる土地が潤沢にある。1960年以降、ナイル川上流のアスワンに大規模水力発電設備を建設し、水力資源も活用してきた。会計・コンサルティング大手アーンスト・アンド・ヤング(EY)が公表する再エネ国別魅力指数(RECAI、2021年10月時点)では、世界19位、アフリカ地域で2位に位置付けられている。
エジプトの14年の電源構成のうち、再エネ発電の割合は9%(うち水力8%、太陽光・風力計1%)だったが、15年に策定した長期計画では、35年にこれを42%(うち太陽光22%、風力14%、水力2%など)まで引き上げる目標を立てた。主な担い手は民間部門である。民間投資による太陽光及び風力発電の導入を図るため、14年12月の再生可能エネルギー法の成立による固定価格買い取り制度(FIT)を導入した。
かつては大規模停電頻発
エジプトがこれほどGXに国を挙げて注力する背景には、14年に大規模な停電が頻発するなど、深刻な電力不足があった。14年当時は11年の「アラブの春」を経て社会的に不安定な状況にあり、電力不足は社会不安を助長する恐れがあったため、電力供給の拡大は喫緊の課題であった。
しかし、火力発電は主要燃料である国内の天然ガスが不足し、発電効率の悪い低品質な重油を利用せざるを得なかった。また、発電のための燃料補助金も財政状況を悪化させていた。こうした事情から、エジプトは、太陽光や風力資源に恵まれている再エネ電源開発に注力することになったが、同分野への国際機関からの支援が期待できることも後押しした。
エジプトの再エネ発電容量は、18、19年に大きく増加した(図1)。これは、三つの事業が完成したことが影響した。第一に、エジプトの紅海沿岸ガルフ・エル・ゼイト地区で18年に完成した陸上風力発電(220メガワット)だ。事業者はエジプト政府の新・再生エネルギー庁で、国際協力機構(JICA)の円借款案件でもある。
第二に、同地区で19年に完成した262・5メガワットの陸上風力発電IPP(独立系発電事業者)事業である。この事業には豊田通商が参画し、国際協力銀行が融資している。従来、事業主体はもっぱら国営電力会社などだったが、同事業はエジプト初のIPPによる風力発電事業となった。
そして、第三に18年から順次運転を開始した世界最大規模(1800…
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週刊エコノミスト
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